コロナがあったから、自分の半径1メートルから離れた世界が描けた
――個人的な感想で恐縮ですが、初めてとあるアラ子さんの漫画を読んだ時、人に知られたら恥ずかしいような感情やルサンチマンを丸出しにするので、怖いくらい迫力があるなと思いました。今回の『ブスなんて言わないで』は、主人公たちと一緒に成長できる感じがあって、今までの作品とはまた違う面白さがあると思いました。
とある:コロナや自分の出産があって、人と会って話さなくなってしまったせいで、「こんないやなことがあった!とかこんなバカなことしちゃった!」っていうのが、あんまり湧き出てこないんですよね。なにくそ!って思ったりもしないので。 今回の作品は、人の意見を読んだり調べたりして、初めて自分から遠い人のことを描いてます。自分がこういうものを描くとは思ってなかったですね。子どもが生まれたら、ママ友の悪口とか描くんだろうなと思っていたので(笑)。
コロナでママ友もできないし。それが作風に影響あったと思います。コロナがあったから、自分の半径1メートルから離れた世界が掛けたのかな、と。ただ、自分の感情から湧き出たものを描いている作家さんを見ると、やっぱりそういうのも書きたいなっていう気持ちも、もちろんあります。
コンプレックスに苦しむ男性の視点を描く
――今回、背の低いことがコンプレックスでイケメンの小坂という男性キャラが出てきますが、男性にも取材をされたのでしょうか?
とある:男性への取材はしてないんですが、低身長の方のユーチューブを観ていて、参考にさせてもらってます。 最初は知子がイケメンが好きっていう話だけを描きたかったので、その時点では彼がどういう人でどんなコンプレックスがあるかとかは全く考えてなくて。担当さんとアイディアを出し合っている時に「すごくいい!」と言ってもらえて。
背の低いことがコンプレックスでイケメンの小坂
S:私自身、身長が高いことにコンプレックスがあって。小さい頃から母親に「あなたは背が大きいから、背が低い男性のことを絶対にバカにしたらダメ」と繰り返し言われていました。アラ子さんから小坂の設定について聞いた時に「その話めちゃくちゃ読みたい!」と思いました。
――前作『美人が婚活してみたら』でもさまざまな男性が出てきましたが、小坂さんはかなり毛色が違うキャラクターですね。
とある:今までは彼らの気持ちを描く必要がなくて、女性側がどう思うかってことだけだったんですが、今回は彼の視点でも描こうと決めてしまったので頑張ります(笑)。誰にとっても、男性にとっても、生きてる限り身近な問題だと思うので。
――1巻のラストの知子と小坂さんがすごく気になります!
とある:いつも先のこと考えないで描いてます(笑)