磯村勇斗の役は大真面目

磯村勇斗の過激な濡れ場も…カルト宗教の危険性を描く怪作『ビリーバーズ』
(画像=『女子SPA!』より引用)

本作のさらなる目玉は、磯村勇斗が映画初主演を務めたことだ。飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍し、2022年は8月26日に『異動辞令は音楽隊!』、9月1日に『さかなのこ』と出演映画が待機する磯村の今回の役はまさに当たり役だった。

 何しろ、今回の『ビリーバーズ』で磯村が演じる主人公は、「バカ」がついてしまいそうなほどに大真面目な役柄だ。規律を厳格に守ろうとし、北村優衣演じる「副議長」がいかに魅力的でも性欲を必死で抑えようと頑張るし、時には勇気を持って悪意に立ち向かう場面もあるが、それでも周りに振り回されてしまうし、間が抜けているところがあって憎めない。

 メインキャラ3人の中でもっとも観客に近い、ストレートに感情移入しやすい役柄だろう。

不良に近い役柄でも思わせてくれること

磯村勇斗の過激な濡れ場も…カルト宗教の危険性を描く怪作『ビリーバーズ』
(画像=『女子SPA!』より引用)

磯村はこれまでも「内面に真面目さがある」役柄を好演してきた。例えば、現在公開中の『PLAN75』(2022)では淡々と商品の説明しながらも優しさを滲ませる市役所職員を、『ヤクザと家族 The Family』(2021)では尊敬する者のために奔走する“半グレ”の若者の役を、『恋は雨上がりのように』(2019)では一見すると軽薄だが実は思慮深さもある青年を好演していた。

 彼は独特の目つき、特に涙袋が目立つルックスのためか、その笑顔を含めた表情にはどことなく横浜流星にも近い「儚さ」を感じさせる。同時に、複雑な感情を表情ひとつで表現できる演技力を持っているため、表面的には不良またはそれに近い役柄でも「それだけじゃない」多層性のある性格が見えてくる。もっと言えば「ああ、この人は良い人なんだ」と思わせてくれるのだ。