自分の資産の棚卸から始める
長期投資では、基本は資産を分散せて、リスクを減らすことが第一条件になってきます。
投資信託を選ぶ際には、まず自分が今、持っている資産の棚卸をするとよいでしょう。棚卸をした結果、不足している資産クラスがあったら、それを投資信託で埋めていけばよいのです。
たとえば、円預金と日本株だけで運用している人の場合、すでに日本株を持っているので、改めて日本株式ファンドを買う必要はありません。なぜなら、資産クラスが重複するからです。同じ理由で、国内債券ファンドも不要です。
この場合、不足している資産クラスは何かといえば、やはり外貨建て資産でしょう。保有資産のすべてが円建てだと、将来、円が急落した時、保有資産の資産価値が大幅に目減りするリスクがあります。そのリスクを最小限に抑えるためには、外貨建て資産を保有するのが一番手っ取り早い方法です。
特定の資産クラス、テーマに投資するファンドは購入対象から外す
問題は、海外資産を組み入れた投資信託だけでも、非常にたくさんの種類があることです。米国株式ファンドにすればよいのか、中国株式ファンドにすればよいのか、あるいは欧州債券ファンドにすればよいのか。もう、この時点で迷いに迷ってしまう人も大勢いらっしゃると思います。
では、ここから先、どうやって絞り込んでいけばよいのでしょうか。
答えは簡単です。円資産以外の海外資産をすべて買ってしまえばよいのです。リターンを徹底的に追求したいなら、新興国も含む世界中の株式市場に投資するタイプを選べばよいし、多少、リスクを軽減させたいなら、世界中の株式と債券に分散投資するタイプを選べばよいでしょう。
このいずれかの投資信託を選んでおけば、満遍なく国外の株式市場や債券市場に資産が分散されるので、バランスのよいポートフォリオになります。そして、世界中の株式市場、債券市場に分散投資する投資信託にすると決めた時点で、投資対象は大幅に絞り込まれるため、投資信託選びはかなり楽になるはずです。
なかには日本株式ファンド、米国株式ファンド、欧州株式ファンド、先進国債券ファンド、新興国債券ファンドというように、資産クラス別に投資信託を選び抜き、資金を分散させてポートフォリオを組む方もいます。確かにそれも、投資信託の買い方のひとつです。
でも、それってとても面倒くさくありませんか。
このように、さまざまな資産クラスに分散させて投資信託を買うと、場合によってはひとつの販売金融機関では揃えることができず、結果的に複数の販売金融機関に口座を開かざるを得なくなるかもしれません。これは面倒ですよね。
さらに言えば、一定期間運用を続けているうちに、基準価額が上昇するファンドもあれば、下落するファンドもあり、全体に占める投資比率にバラツキが生じてきます。それを「リバランス」という形で調整するわけですが、それも自分でいちいちやらなければなりません。
しかし、もともとすべてに投資している商品であれば、リバランスもプロが行ってくれるので、安心です。
中野晴啓(なかのはるひろ)
セゾン投信代表取締役社長。1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。07年4月より現職。「R&Iファンド大賞」最優秀ファンド賞を4年連続受賞。公益財団法人セゾン文化財団理事、一般社団法人投信協会理事。著書に『預金バカ』『退職金バカ』(講談社)、『投資信託はこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)他多数。
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