©2022 Paramount Pictures. All rights reserved.
まず、本作はとても楽しい映画だ。サンドラ・ブロックとチャニング・テイタムが南の島で大冒険!というシンプルな期待に、圧倒的なサービス精神をもって応えてくれる上に、クスクス気兼ねなく笑えるシーンも盛りだくさん、しかも意外な感動も待ち受けているという、優秀なアクションコメディに仕上がっていた。
タレント吹き替えへの不安 VS 田中圭への愛
ダニエル・ラドクリフとブラッド・ピットが、良い意味で極端な役で全力を尽くしてくれるのもたまらないものがある。
そして、本作の吹き替えでチャニング・テイタムの声を担当するのは田中圭。彼はこのオファーに対して「メラメラした」「もう一度挑戦したい念願の仕事」など、闘志を燃やすコメントもしていた。
とはいえ、本業声優ではない俳優の起用に不安を覚える人も少なくないだろう。筆者も正直、観る前は「タレント吹き替えを条件反射的に拒絶してしまいがちな映画ファン」VS「田中圭の仕事をなんでも肯定したい田中圭ファン」という相反する心理が拮抗していた。
しかし、本編の吹き替えを観てみれば、田中圭への愛が圧勝したのはもちろん、総合的に良い吹き替えじゃないか!と賞賛できた。特に、田中圭のファンには是が非にでも吹き替え版で観ていただきたい。その具体的な理由を記していこう。
カッコ悪くて憎めないチャニング・テイタムの魅力
本作のあらすじは、恋愛小説家のロレッタ(サンドラ・ブロック)が、謎の大富豪フェアファックス(ダニエル・ラドクリフ)に強引に南の島へと連れ去られたため、小説のカバーモデルであるアラン(チャニング・テイタム)が救出に向かう!というシンプルなもの。小難しいところがまったくない、良い意味で気を張らずに観られるポップコーン・ムービーなのだ。
注目は、チャニング・テイタム演じるアランという男が「表面上はセクシーだが、本当はちょっと不器用で情けない」こと。新作小説のプロモーションのため、派手なパフォーマンスでファンの期待に応えようとしているものの、どうにも間が抜けていて、盛大な失敗をしてしまう。はっきり言ってカッコ悪いのだが、愛嬌もあって憎めない。
チャニング・テイタムは筋骨隆々で屈強にも見えるが、『フォックスキャッチャー』(2014)のような悩みを抱えたダウナーな役も似合うし、『21ジャンプストリート』(2011)のようなコミカルな役にもバッチリハマっていた。その資質と俳優としての力が、今回の「パッと見は大人気でセクシーなモデルだけど、けっこうダメな人では?」とじわじわ思わせてくれるキャラクターにも最大限にマッチしていたのだ。