相場心理のワナに惑わされない
積立投資のよいところは、途中で心が折れずに続けられる、ということです。
マーケットは何年かに一度、大きく下落します。マーケットが大きく下落すると、これまで積み立ててきた投資信託の評価額も、大幅に下落します。どれだけマーケットが急落し、保有している投資信託に大きな損失が生じたとしても、積立投資の場合、それを継続する必要があります。
でも、大概の人は損失額がどんどん膨らんでいく状況を見て、途中で怖くなります。「このままだと、資産が半分になってしまうのではないか」などと、最悪の状況を考え始めるのです。そして、その恐怖心が最大に膨らんだところで、積立投資をやめてしまうのです。
また、それとは逆に、儲かったから積立投資をやめてしまうというケースもあります。今から3年ほど前、アベノミクスで相場全体が底上げされた局面において、個人の方が、それまで積み立てていた投資信託を全額解約する動きが広まりました。
長期的な資産形成をするうえで大事なことは、とにかく積立投資を継続するという点に尽きます。値上がりしたから利益確定のために解約する、値下がりしたら恐怖に駆られて解約する、ということの繰り返しでは、いつまで経っても資産を築くことはできません。
利益を確定した後に、さらに上昇するという見通しを持ち、そこから再び積立をスタートさせるのは、心理的にもなかなか難しいものです。人間は誰でも、自分の判断が誤っていたのを、素直に認めたがりません。一度利益確定させたら、多くの人はさらに値上がりしていく様子を見たくありませんから、きっと積立を再開することなく、じっとしていると思います。
逆に、損失が生じて撤退した人は、そこが大底で上昇に転じたとしても、自分の判断を優先して、「相場はさらに下がる」と思いたがります。実際のマーケットはすでに上昇トレンドに移っているのに、自分は「まだ下がる、まだ下がる」と思い込んでいますから、積立投資を再開できず、結果、退場を余儀なくされてしまうのです。
こうした相場心理のワナに引っかからないようにするためには、いついかなる時も、積立投資を継続していくのが一番です。マーケットは、常に上げ下げを繰り返しています。リーマンショックのような、「100年に一度」と思ってしまいがちな大暴落に直面すると、「これでもうすべては終わった」というような気持ちになるものですが、そのリーマンショックでさえ、多くの国の株式市場では、リーマンショック前の高値を抜き、回復しています。上がったものはいつか下がるし、下がったものはいつか上がるのです。
そうである以上、上がったから喜んで解約し、下がったから恐れおののいて解約するというのは、長期の資産形成において、絶対にやってはいけないことなのだということが、おわかりいただけるのではないでしょうか。
相場の心理ということを見ても、銀行引き落としのような形で、マーケットの上げ下げに関係なく、ひたすら淡々と積み立てていく積立投資がよいということが理解できると思います。それが最後の最後に笑う秘訣なのだと心に決めて、積立投資を続けるようにしてください。
中野晴啓(なかのはるひろ)
セゾン投信代表取締役社長。1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。07年4月より現職。「R&Iファンド大賞」最優秀ファンド賞を4年連続受賞。公益財団法人セゾン文化財団理事、一般社団法人投信協会理事。著書に『預金バカ』『退職金バカ』(講談社)、『投資信託はこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)他多数。
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