暑い時期の散歩は早朝か夜に、涼しい日でもできるだけ日陰を選んで歩く…と、愛犬の“外出時”の熱中症対策は万全な飼い主さんも多いでしょう。でもその熱中症、実は“室内”でも起こるものなんです。
留守番や夜中の就寝時など、飼い主さんの目の届かない時間が発生する室内では、どのようなことに気をつけるべきなのでしょうか。
室内での熱中症の危険性とその対策、万一の際の応急処置をご紹介します。
1.犬の熱中症とは?
熱中症とは、高温の環境下で体温を調節する機能が働かなくなり、体温の上昇や脱水、血圧の低下などが起こる疾患です。
重度になるとフラつきや嘔吐のみならず、さまざまな臓器に障害が起こることもあり、処置が遅れると命にも危険が及ぶ、とても恐ろしいものです。
2.気をつけなければいけない時期は?
熱中症は夏場だけのもの、と思っていたらそれは大きな間違い。気温に加え湿度も上昇する5~6月には、まだ愛犬の体が暑さに慣れていないため、熱中症になりやすいと言われています.
また、被毛で覆われてる犬と人間とでは、暑さの感じ方は大きく違うもの。飼い主さんがまだそれほど暑さを感じない時期でも、犬にとってはすでに“暑い季節”に入っている可能性があります。本格的な夏を迎える前から、しっかりと熱中症対策をしていきましょう。
3.なぜ犬は熱中症になりやすい?
犬が熱中症になりやすい理由
人間は皮膚に汗腺があるため、全身の発汗によって体温調節ができますが、犬には肉球にしか汗腺がありません。主な体温調節は「ハァハァ」と口で呼吸をする「パンディング」で行いますが、高温下ではこのパンディングだけでは発汗が追いつかず、熱中症にかかりやすいのです。
また、たくさんの毛に覆われている犬はその被毛によって熱がこもりやすく、体温が上昇しやすい動物です。それは私たち人間が、夏場に毛皮のコートを着ているようなもの。この被毛によっても、熱中症にかかるリスクは高まります。
特に注意が必要な犬は?
①短頭種の犬
パグやフレンチ・ブルドッグなどのように、ぺチャッとした鼻の形をしている短頭種の犬は、鼻腔の中が狭いため効率の良いパンディングができません。そのため、熱中症にかかりやすいと言われています。
②毛色が黒い犬
黒色は日光の熱を吸収しやすいため、毛の色が黒い犬は注意が必要です。
③持病のある犬や肥満の犬
例えば、腎臓病に罹患しているために脱水を起こしやすかったり、心臓に疾患があるためスムーズな呼吸ができない犬は、熱中症発症のリスクが高くなります。
また肥満状態にある犬も、脂肪によって軌道が圧迫されスムーズなパンディングがしづらいため、注意が必要です。
④老犬
年を重ねるごとに体温を調節する力は衰えてしまいます。
また、老犬になると体を動かすことも減るため、自ら暑さをしのいだり、積極的に水分を補給することができなくなるので要注意です。
4.もしかしたら熱中症?こんな症状には要注意!
もしも愛犬が熱中症になってしまったら、どのような症状があらわれるのでしょうか。
いち早く異変に気が付けるよう、しっかりとそのサインをチェックしておきましょう。
- よだれを垂らす
- 元気や食欲がない
- 粘膜がうっ血、充血している
- 下痢や嘔吐の症状がある
- フラつきで上手に歩けない
- 震えている
- ぐったりしている
- 口を開けてハァハァと呼吸をする
- けいれんを起こしている
- 意識がない
5.自宅でできる熱中症の応急処置
たとえ軽度でも、上記のような症状が見られるときはすぐに動物病院へ相談をしましょう。
また、早めの応急処置も大切です。まずは飼い主さんが愛犬の体を上手に冷やしてあげてください。受診が必要な場合も、体を冷やしながら動物病院へ連れて行くのがベストです。
保冷剤を使って部分的に冷やす方法
保冷剤や氷を入れた袋をタオルに包んで、首や脇、脚の付け根部分を冷やしてください。このような太い血管の通っている所は、循環する血液の温度も下げるため、体温を下げるのに効果的です。
体を水でぬらして冷やす方法
常温の水を犬の体に直接かけ、そこに風を送ることによって体温を下げることができます。その際、冷たい水をかけると体表の末梢血管が収縮を起こし、効率良く体を冷やすことができなくなってしまいます。必ず常温の水をかけるようにしましょう。