声は、“声のテンプレート“がないと出せない
――どういう意味ですか?
山崎「小学生の頃から私はピアノの前に黙って座って練習している時間がとても長かった。練習や宿題が終わったらもう夜10時や11時の日々。それから本を読むのがなによりの楽しみでしたが、本を読むときも黙っていますよね。つまり、学校にいる間しか声を出していなかったんです。おしゃべりな子ではありましたが、声が出なくなった瞬間を振り返ると、感情をどのように声に乗せたらよいのかわからず戸惑っていたように思います。要は、自分の感情が高ぶっていたときに声を出そうとしたけど、声が出せなかったんです」
――感情を出すことができないから声も出なかったということですか?
山崎「はい。声というのは、自分が出してきた声、そして、他人の声を聞くことで無意識に培われてきた『声のテンプレート』がないと出せないものなんです。例えば、自分の周囲の人の声が高いと、知らぬうちに同調するかのように自分の声も高くなっていきます。日本人でも、日本にいたときは高い声で喋っていたのに、アメリカ留学から戻ってきたらすごく低い声になっていたりすることが実際によくあります」
――確かに、私も英語で外国人と話すときは声が低くなります!
山崎「それは言語の違いのせいだと思われていますけれど、アメリカでの英語話者たちの声、つまり周りにある声が低いから、それに同調して英語で話すときには『低いテンプレート』を出す習慣がつくんです。アメリカでは女性のアナウンサーも声が低いですよね」
日本人女性の声は世界一高い
――山崎さんは著書で日本人女性は世界一声が高いと記されています。
山崎「もともとは海外の論文に書かれていたことなんですが、実際に声のピッチを測ってみたら、本当に日本人女性は声が高いんですよ! 声の高さには体格も関係があり、体が小さい人は声帯も短めなので声が高くなり、体が大きな人は声も低くなります。しかし、そういった体格差をこえて日本人女性の声はひときわ高いんです。各国の女性アナウンサーの声を録音したものがあるので、聞いてみませんか?」
――ぜひお願いします。
<インド、フィンランド、ドイツ、イギリス、アメリカ、中国、日本の女性アナウンサーの録音を聞く>