老後資金を準備していこうと考えたときに、個人年金保険で備えるのも選択肢の1つですね。積み立てができるだけでなく、支払う保険料は個人年金保険料控除の対象となるので、所得税と住民税の負担が軽減されるとメリットもあります。しかし、保険料の支払いが長期にわたるため、加入前にはよく検討しなければなりません。今回は、保険料の支払いが困難になって途中解約することにしたSさん(45歳女性、会社員)の失敗エピソードをご紹介します。

老後資金を貯めようと個人年金保険に加入

Sさんは、貯蓄が苦手なことが悩みでした。「貯金しなくては」とわかっていてもなかなかうまくいきません。

そんなSさんは、会社の先輩から「老後は年金だけでは足りないから、今から少しずつ貯蓄していかないとダメなのよ」と聞いていたこともあり、会社にときどき来ていた生命保険会社のセールスレディの提案を受けて、個人年金保険に加入することにしました。保険料は、毎月2万円、60歳まで払い込みます。受け取る年金額は60歳から年に約75万円、毎月約6.2万円になります。

「すごく増えるわけではないけど、もらえる年金額はわかっているし、保険料は毎月口座から引き落とされるだけで楽だから」と、納得して加入手続きをされました。

もう1本加入することに

今から6年前、銀行でたまたま個人年金保険のパンフレットが目に入り、「もう1本、個人年金保険に加入するのもいいかもしれない」と、窓口で申し込みをすることにされたそうです。毎月の保険料は2万円です。

ところが、その後勤務している会社の業績が思わしくない状況が続き、収入が減ってしまったので、加入後5年しかたっていませんでしたが、しかたなく解約することになりました。解約したときに手元に戻ってきた金額は、払い込んだ保険料の総額より25万円ほど少ない額だったそうです。

解約しようと考えたとき、自己判断は禁物

個人年金保険は、中途解約をすると、払い込んだ保険料より受け取る解約返戻金の額が少なくなることがあります。保険料払い込みが満了するまでは使うことができないお金と心得て、毎月の保険料を決めることが大切です。

Sさんが、個人年金保険を解約されたことは残念なことですが、個人年金保険の契約は20年~40年などと長期間になることがありますので、一時的に保険料の支払いが困難になるかもしれないという事態は、誰にもその可能性があります。

保険料の支払いが難しくなった場合には、次のような方法が利用できないか検討し、保険会社のコンタクトセンターなどでも相談してみましょう。

自動貸付制度

解約返戻金の範囲内で、保険料を自動で立て替える制度です。立て替える保険料分には、年に数%の利息がかかります。また自動貸付制度のない個人年金保険もありますので、あらかじめ確認しておきましょう。

契約者貸付

保険契約を解約せず、解約返戻金の一定の範囲内で借り入れを受けられる制度です。利用分には利息がかかります。

払済保険への変更

保険料の払い込みを中止し、それまでに支払った保険料をもとに基本年金額を変更します。年金開始日、年金の種類、年金支払期間は変わりません。払済保険が基本年金額の限度に満たない場合や、個人年金保険料税制適格特約を付加している場合で契約後10年に満たない、制度がないなど、利用できないケースもあります。

基本年金額の減額

将来の基本年金額を減額することで、支払う保険料を少なくして契約を続けることが可能になります。基本年金額には限度額があり、利用できないケースもあります。

すぐに現金として使える資金も必要

個人年金保険は、貯蓄を継続するにはとても有効な方法ですが、「貯金代わりに」と考えると、解約するしかない状況になる可能性もあります。今回のSさんの場合は、最初に加入した個人年金保険の年金額を減額して、2つとも続けるという選択もできたかもしれません。緊急時に使える現金が生活費の3ヵ月から1年分あると一時的な資金不足に対応しやすくなりますから、すぐに使える預貯金も必ず確保しておきましょう。

 
文・藤原洋子
所属・FP dream代表
生命保険会社で営業職を経験し、AFP資格を取得。現在は、独立系ファイナンシャル・プランナーとして、執筆、相談、セミナーを通して活動しています。

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