「いつのまにか、溶けて、混ざっちゃう愛」
――非常に人間的で深い愛が描かれています。エッセーで言葉を紡がれているように、もし愛を他の言葉で換言するとしたら、どんな言葉になるでしょうか?
稲葉:夏目漱石みたいなことですか?
――そうです。
稲葉:(笑)。それは難しいですね。何だろうな、日本的に考えると、愛って照れくさくて、美徳としてクローズしている感じがあります。「愛してます」が、「愛してます」として意外と文字通りには伝わらないです。台詞として書かれているときにも不思議な感じがあります。多分、海外ほど、愛の幅が広くないんです。
でも、きっと「ありがとう」に詰め込める気がするんです。ありがとうも相当幅が広い言葉です。辛口の中にも愛は詰め込めると思うし、あえてこの言葉を限定せずに、好きな人、愛する人に対してなら、どこにでも忍ばせることができるのが日本語だなと思います。
――「I LOVE YOU」の「LOVE」は、恋も愛も両方意味していますからね。
稲葉:そうなんです。日本語で「愛」と訳すと、ハードルが高い感覚がどこかあります。
――愛を受けることもできますし、愛を与えることもできます。双方に行なうこともできます。仁とKAIとの関係性は、結果的に愛だったのでしょうか?
稲葉:この2人の愛は、すごく根深いですよね。KAIのヒストリーとバックボーンがあり、仁の歩んできた道と壊れてしまったところからリスタートする話。お互いに矢印を向けて、愛を与え合っているというよりは、いつのまにか、溶けて、混ざっちゃう愛です。
――愛についてぜひエッセーで書いていただきたいです。連載後半が楽しみです。
稲葉:ありがとうございます。愛を考え、言葉にしながら、人との関わりを高め続けられたらいいなと思っています。
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<取材・文/加賀谷健 撮影/鈴木大喜>
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