日本は保険大国です。全体では約9割の方がなんらかの生命保険に加入しており、さらにその9割の方は医療保険・医療特約に加入しています。

他人の保険やお金の事情ってなかなか聞けないけど、やっぱり気になりますよね?

公益財団法人生命保険文化センターが実施した、平成30年(2018年)度「生命保険に関する全国実態調査」の結果から確認してみましょう。

保険料の相場の平均

平均は月に約3万2,000円

生命保険の平均保険料は月額約3万2,000円です。入院や手術に対する給付などの医療保障だけでなく、死亡保障なども含んだ金額です。また、保険料額が不明の世帯も約28%ありました。

支払い保険料は近年減少傾向にあります。2006年の調査では平均約4万4,000円でした。

最も多いのは月に1~2万円の世帯

最も数が多かったのは月に1~2万円の保険料を支払う世帯で、全体の16%を占めています。

次に多いのは月に1万円未満の世帯(全体の14.8%)で、次に2~3万円の世帯(同12.9%)となりました。

世帯の年収別の平均

世帯年収 世帯の平均月額保険料
(加入世帯のみ)
保険料が
年収に占める割合
200万円未満 1万7,500円 12.0%
200~300万円未満 2万5,000円 12.0%
300~400万円未満 2万3,000円 8.0%
400~500万円未満 3万1,000円 8.2%
500~600万円未満 2万9,000円 6.3%
600~700万円未満 3万2,000円 5.8%
700~1,000万円未満 3万6,000円 5.1%
1,000万円以上 5万1,000円 4.5%

多くの世帯で月に2~3万円の保険料

生命保険に加入している世帯を年収別に分け、それぞれの平均を表にまとめました。

世帯年収が200万円未満、また世帯年収が1,000万円以上の世帯では支払い保険料に顕著な差が見られますが、それ以外の世帯ではそう大きな差は見られませんね。

全体では年収の7.2%を保険料に充てている

支払い保険料が年収に占める割合は、全体平均では7.2%でした。世帯年収が高いほど下がっていく傾向にあり、年収が低いと負担感を強く感じやすいようです。

世帯の年齢別の平均

世帯主の年齢 生命保険の加入率 世帯の平均月額保険料
(加入世帯のみ)
29歳以下 79.2% 1万9,000円
30~34歳以下 86.7% 2万5,000円
35~39歳以下 88.7% 3万2,000円
40~44歳以下 92.4% 2万9,000円
45~49歳以下 93.3% 3万6,000円

30歳以上で加入率・保険料が上昇

今度は生命保険に加入している世帯を、世帯主の年齢別に分けた調査です。

29歳以下では生命保険の加入率が低いですが、30歳以上の世帯では加入率が高くなります。40歳以上だと加入率が90%を超え、月額保険料も概ね年齢に比例し大きくなっています。

ライフステージが進むにつれ備えを充実させたいニーズがありそうですね。

年齢が保険料に与える影響

一般に生命保険は、同じ保障でも年齢に応じて保険料が上昇します。ライフステージが進むにつれ死亡率や病気に掛かる可能性が高くなり、保険料もその可能性に合わせて上昇するためです。

ライフスタイル別の保険料の平均

未婚者は月に1.5万円、既婚者は1.7万円支払っている

未婚、既婚別の保険料の平均(1人あたり)
未婚 既婚
平均月額保険料 1万5,000円 1万7,000円
12万円未満 ※年間。以下同 38.6% 32.9%
12~24万円未満 28.6% 31.3%
24~36万円未満 14.9% 16.3%
36~48万円未満 6.7% 6.6%
48~60万円未満 1.6% 3.3%
60万円以上 2.7% 3.7%
わからない 6.9% 6.0%

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(2019年)」によると、未婚者は平均1.5万円、既婚者は平均1.7万円の保険料を月に支払っているようです。

既婚者の方が年間で2.4万円多く支払っていますね。結婚し大切な方が増え、「生活を守りたい」という意識が働き、保障を厚くしたのかもしれません。

子が高校生~大学生の世帯で最も保険料負担が大きい

子の有無、子の年代別の保険料の平均(1世帯あたり)
ライフステージ 平均月額保険料
夫婦のみ(40歳未満) 2万円
夫婦のみ(40~59歳) 3万1,000円
乳児 ※末子。以下同 2万9,000円
保育園児・幼稚園児 3万4,000円
小・中学生 3万6,000円
高校・短大・大学生 3万9,000円
就学終了 3万8,000円
高齢夫婦有職 2万7,000円
高齢夫婦無職 2万1,000円

生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(2018年)」によると、子がいる世帯が支払っている保険料は高い傾向にあるようです。

最も多く保険料を支払っているのは、子が高校生から大学生(短大含む)の世帯で、月に3.9万円を支払っています。夫婦の年齢が進んでいる影響もあるでしょうが、学費などの支払いに備えている姿が想像できますね。

妻がフルタイムの共働きは年間55.8万円支払っている

妻の就労状況別の保険料の平均(1世帯あたり)
妻の就労状況(夫は就労) 平均月額払込保険料
妻は無職 3万円
夫婦共働き 3万8,000円
妻がフルタイム就労 4万7,000円
妻がパート・派遣 3万1,000円

夫婦共働き、特に妻がフルタイムのいわゆる「2馬力」世帯は、より多くの保険料を支払っているようです。月に4.7万円を支払っており、妻が専業主婦の世帯より1.7万円、年間では20万円近く多く支払っています。

2馬力世帯は①既婚者で保障ニーズが高い、②世帯年収が比較的高いという2つの要因が影響していそうですね。

【加入の前に】医療保険おすすめの選び方

データの多くは営業職員経由&比較なしで加入

「思ったよりみんな保険にお金払ってるんだ…」と、自分の保障が不安になった方もいらっしゃるかもしれません。しかし、今回の調査では、保障の条件以外に保険料が高くなりやすかった要因があります。

2013年~2018年の間で生命保険の契約をした方のうち、保険料が比較的安い通信販売(インターネットなど)で契約している方はわずか6.5%でした。また、同じ期間で契約した方の66.7%は他の保険商品と比較検討をしていません。

保険料が安いインターネット系の生命保険がほとんど反映されておらず、しかも他の保険商品との比較すらほとんどなされていなかったのです。支払い保険料が高くなりやすかった可能性は充分あるでしょう。

比較検討をしっかりする

医療保険などの生命保険に加入する際は、比較検討をしっかり行うことが大切です。選択肢も大手の保険会社だけでなく、インターネット系・ダイレクト系の生命保険会社まで広げるとなおよいでしょう。

注意したいのは、保険料だけ比較するのではなく、保障内容をしっかり確認することです。

私たちはあくまで「保障が欲しくて保険に加入する」のであって、保険料から先に考えてしまっては本末転倒です。保障内容をしっかり確認し、次に保険料を比較するようにしましょう。

医療保険料を決めるものとは?

月額保険料が高くなる 要因 月額保険料が安くなる
「収支相当の原則」要因
長い(終身) 保障期間 短い(定期)
手厚い 入院日額など保障内容 シンプル
貯蓄性がある 貯蓄性 掛け捨て
「公平の原則」要因
高い 年齢 若い
悪い 健康状態 良い
女性 性別 男性
保険会社の要因
高い 保険会社の経費率 低い

手厚いほど保険料が高い 収支相当の原則

当たり前のように感じるかもしれませんが、手厚い保険ほど保険料は高くなります。保障期間が長く保障内容も手厚い、また貯蓄性もあるというような保険は、保険料が高くなりやすい傾向にあります。

保険の機能が手厚いということは、保険会社が加入者へ支払うお金が大きいということです。その分のお金を保険料として集めないと、保険会社は資金が枯渇し、保険が破綻しかねません。

保険の破綻を防ぐため、保険会社が加入者へ支払うお金と、加入者から保険料として集めるお金の額は一致するよう設定されます。これを「収支相当の原則」と呼び、保障の手厚さと保険料が比例する理由の1つです。

保障の対象になりやすい方は保険料が高い 公平の原則

健康な方とケガや病気のリスクが高い方、どちらが保険金を多く受け取るでしょうか?おそらくケガや病気リスクが高い方で、同じ保険料だと健康な方が不公平を感じてしまうかもしれません。

この不公平を埋めるのが「公平の原則」です。保障の対象になりやすいと思われる方に、保険料をより多く負担してもらう仕組みです。

年齢が高い方や健康状態が悪い方は、そうでない方より保険料が高くなる傾向にあります。女性も、男性より長い平均寿命が原因で保険料が高くなる場合があります。

保険会社の経費「付加保険料」も大切

医療保険の保険料は、加入者への支払いに充てる「純保険料」と、保険会社の運営事業費に充てる「付加保険料」から成り立っています。

純保険料は保険会社ごとの違いはそうないでしょう。一般的に多くの加入者を集めますから、保険会社ごとに差は出にくいためです(大数の法則といいます)。

付加保険料は「予定事業費率」から算出され、保険会社の経費率に準じます。低コストで運営している保険会社の保険料は低く、高コスト運営の保険会社の保険料は高くなります。

医療保険の適正価格や目安はどれくらいか算出するには?

医療保険に限らず、保険は「保障と保険料のバランス」が大切です。バランスが取れているかチェックするために、医療保険の保障内容を知っておきましょう。

医療保険の保障内容「入院日額」の考え方や、そもそも私たちが加入している「公的健康保険」の保障内容について解説していきます。

医療保険は「入院日額」をベースに考える

医療保険は契約ごとに「入院日額」が設定されます。たとえば、入院日額1万円なら、入院1日あたり1万円の保険金が受け取れます。10日間の入院なら10万円ですね。

医療保険の場合、入院以外の保険金給付も入院日額を計算の基にしていることがあります。通院給付金や手術給付金などが該当し、「入院日額の10倍」といったような計算がなされます。

医療保険ごとに計算方法は違いますので一概にはいえませんが、医療保険は入院日額をチェックしましょう。

平均入院日数は29.3日、1日あたり約2万円の自己負担

平均入院日数 入院時の1日あたり自己負担費用
(全体平均2万3,300円)
全体 29.3日 5,000円未満 10.6%
男性 26.9日 5,000~7,000円未満 7.6%
女性 31.7日 7,000~1万円未満 11.1%
0~14歳 7.4日 1万~1万5,000円未満 24.2%
15~34歳 11.1日 1万5,000~2万円未満 9.0%
35~64歳 21.9日 2~3万円未満 12.8%
65歳以上 37.6日 3~4万円未満 8.7%
75歳以上 43.6日 4万円以上 16.0%

問題は、「入院日額をどれくらいにすればいいか」ですよね。手厚い方が安心ですが、保険料が高くなる要因にもなります。入院の実態を参考にしてみましょう。

生命保険文化センターによると、入院の平均日数は29.3日、1日あたりの自己負担費用は2万3,300円のようです。年齢が上がるほど入院日数が長くなる傾向があり、7割以上の方が1日あたり1万円以上の自己負担を支払っています

公的保障も考慮し、必要な保障だけに加入する

保険選びには自分に必要な保障を知ることが不可欠です。そのために、まずは誰でも受けられる公的な保障を考慮しましょう。

私たちが加入する公的健康保険にもケガや病気に備える仕組みがあります。「高額療養制度」では治療費が一定以上にならないようにしてくれますし、ケガや病気で働けなくなったときは「傷病手当金」や「労災保険金」が支給されます。

「ケガや病気への備えは最初から持っている」ことを認識し、医療保険への加入は公的保障が保障しない部分をカバーするイメージで検討しましょう。

平均に合わせるより自分に必要な保障を選ぶ

「他の人がどれくらい保険にお金を掛けているか」というのは気になってしまいますよね。ただ、保険の加入は保険料ではなく保障内容で決めるべきで、ましてや他人の保険料に合わせて保険を決めるのはやめましょう。

必要な保障は人によって違います。公的な保障を考え、自分にどんな保障が必要なのか慎重に考えましょう。そして保険の加入の際は、保険商品同士をしっかり比較検討し、コスパのよいものを選ぶようにしましょう。

文・若山卓也(ファイナンシャルプランナー)

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