保険の加入を検討するときには、亡くなった後の遺族の生活や一時的な入院の費用を保険金で補うことができるように、生命保険や医療保険に注目します。しかし、「幸い命に別状はないけれど、長い期間にわたり働くことができない」という事態になるケースも想定しておきましょう。

働けなくなって収入が減少したときの生活費などを補うことを目的とした保険を所得補償保険といいます。所得補償保険を検討するときのポイントやメリット、デメリットを解説します。

所得補償保険は働けなくなったときの収入カバーの保険

(写真=PIXTA)

所得補償保険は、一定の働けない状態になったときに収入の不足分をカバーしてくれる保険です。医療保険は、病気やケガの治療で入院したり手術を受けたりしたときに、保険金を受け取り医療費にあてることができます。所得補償保険は、医師や保険会社から就業不能であると判断された場合に、入院中はもちろん自宅で療養している場合でも、契約時に設定した金額を月ごとに受け取ることができる内容になっています。

所得補償保険は、損害保険会社で販売されています。よく似た名称の保険で、「就業不能保険」がありますが、こちらは生命保険会社が販売しています。基本的な内容は同じですが、就業不能保険が55歳~70歳満了などの長期間に設定されているのに比べて、所得補償保険の保険期間や保険金支払期間は1年から10年など短期間の設定となっているのが特徴です。

国やけんぽの補償もあるのに所得補償保険に入った方がいい?

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病気やケガで働くことができない場合には、公的年金制度や公的医療保険制度から給付金を受け取ることができます。しかし、健康で働いているときの収入と同様な金額になることはありませんし、そのうえに治療費がかかり続けることが考えられます。

受け取ることができる給付は、会社員の場合は、健康保険からの傷病手当金、業務・通勤を原因とするなら労災保険から受け取ります。傷病手当金は、連続して3日間休んだ後4日目から最長で1年6ヵ月間、休業前12ヵ月の給与の平均額の3分の2を受け取ることができます。

その後は、所定の障害状態であると認定された場合に、等級に応じて障害基礎年金、障害厚生年金を受け取れます。公的な保障以外には、有給休暇など会社の制度を利用できる場合があります。

自営業の方の場合は、国民健康保険に加入していますから傷病手当金は給付されません。労災保険は補償要件の対象外で加入していない場合は給付を受けることができません。障害状態であると認定された場合に受け取ることができるのは、障害基礎年金のみになります。

公的保障の内容について確認し、自分にとって所得補償保険が必要かどうか考えておく必要があるでしょう。

所得補償保険に入るメリットがある人の特徴

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所得補償保険に入る必要性が高いのは次のような方です。

住宅ローンを返済している

住宅ローンを契約する場合には、「団体信用生命保険」に加入します。契約者に万一のことがあったときに以降のローン返済がなくなるという保障内容です。特定の病気にかかると残高が0円になるなど、保障内容は銀行によりさまざまですが、保障対象外の病気やケガで働けなくなった場合は住宅ローンの返済は続けなければなりません。

フリ-ランスで働く個人事業主である

趣味を生かしてアクセサリーの販売をしている方、ライター業をしている方など、個人事業主として働いている方です。パートナーからの扶養を外れてその収入が家計を支えている方もいらっしゃるでしょう。働けなくなった場合に公的な保障が会社員の方と比べて薄いので、しっかりと対策しておく必要があります。

家族で自営業をしている

労災保険は、日本国内の事業所で雇用されている方が対象になっています。家族従事者は原則として労働者とみなされないので労災保険の対象とならず給付を受けることはできません。

妊娠・インフルエンザは補償対象外?補償される条件とは

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所得補償保険の補償対象になり保険金を受け取れるのは、原則保険期間中に病気やケガをして、就業不能になったときです。これは、保険会社により補償対象とみなされるかどうかが異なっている部分があります。例えば、妊娠・出産・早産・流産に伴う就業不能、精神疾患による就業不能などです。加入前に確認しておきましょう。

所得補償保険には補償の対象にならない「免責期間」があります。保険期間が短期の所得補償保険は7日、長期の就業不能保険は60日または180日です。例えば、インフルエンザにかかった場合、所得補償保険なら8日以上働けない状態が続いたときは補償の対象になります。

所得補償は働き方によって検討して

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病気やケガで働けなくなることは、誰にでも起こる可能性があります。働き方や、就業以外の収入の有無などによって働けない場合の備えは大きく変わってきます。公的な保障をしっかり確認し、所得補償保険の必要性を検討しておきましょう。

文・藤原洋子(ファイナンシャル・プランナー)

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