自分の会社の退職金制度や年金制度について、よく知らないという方は少なくありません。特に企業独自の年金制度と国の年金制度は混同されがちです。そこで、よく間違えられやすい企業年金と厚生年金の違いについてお伝えします。

厚生年金は2階、企業年金は3階

(写真=Kelly Marken/Shutterstock.com)

日本の年金制度は3階建てといわれています。1、2階が公的年金で、3階は私的年金です。

1階部分は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金。2階部分に、会社員や公務員が加入する厚生年金があります。法律上、株式会社などの法人は、社長1人の会社でも厚生年金に加入することになっています。ですから、法人にお勤めの方であれば、厚生年金には必ず加入します。なお、個人経営の事業所については加入が任意のケースがありますから、厚生年金に加入しているとは限りません。

企業の中には社員の老後のため、さらに独自の年金制度を上乗せするところもあり、それが3階部分の企業年金です。

厚生年金保険料は労使折半、企業年金は企業によってさまざま

自分自身が厚生年金に加入しているかどうかは、給与明細を見れば分かります。厚生年金の保険料は会社と従業員が半分ずつ負担しますから、給与明細に「厚生年金保険料の金額」が記載されていれば、厚生年金に加入しているということです。

一方、企業年金は制度を導入する・しないは企業次第です。企業年金制度があるとしても、従業員全員が制度に加入しているとは限りません。一定の職種のみを加入対象としたり、従業員が加入を選択したりできるケースもあります。

企業年金の掛け金については、厚生年金が労使折半であるのに対し、企業年金は企業が負担するケース、企業と従業員がお互いに拠出するケース、従業員のみが拠出するケースなど、企業年金の制度によってさまざまです。

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企業年金の種類

(写真=kan_chana/Shutterstock.com)

企業年金の種類は大きく分けて3つです。1つ目は確定給付企業年金です。この制度は、原則として事業主が掛け金を負担し、従業員がその掛け金を管理したり運用したりすることはありません。従業員が年金を受け取る際には、一時金での受け取り、あるいは終身年金、5年以上の期間にわたって受け取る年金形式、保証期間つき年金形式など、さまざまな受け取り方があります。

2つ目は、厚生年金基金です。厚生年金基金は企業が従業員に老後の給付を約束する制度です。しかし、運用難や積立不足という問題が発生し、現在では解散や他制度へ移行が進んでいます。

3つ目の企業年金は確定拠出年金です。掛け金は、全額企業が負担する場合、企業と従業員が両者で負担する場合、従業員のみが負担する場合など、企業によってその形態は異なります。いずれにしろ、掛け金は従業員自らが運用し、自分自身で年金を作っていくイメージです。

年金の受け取りについては、退職金のように一時金で受け取るか、年金形式で受け取るか、あるいは一部一時金・一部年金形式で受け取るか、自分で選択します。年金形式で受け取る場合、5年以上20年以下の期間にわたって受け取るのが一般的ですが、終身年金で受け取れるケースもあります。

なお、確定給付企業年金も確定拠出年金も受け取りについては、企業によっては一時金と年金形式を併用できないなど、ルールが存在する場合もあります。
出典:企業年金連合会 『企業年金制度』

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年金を受け取るときの課税対象の違い

(写真=nelen/Shutterstock.com)

退職が近くなると、これらの年金をどのように受け取れば良いのか、非常に悩みます。というのも、老後の生活に合わせた受け取り方をしたいというのは、もちろんなのですが、一括で受け取るか、分割で受け取るか、受け取り方によって、税金の金額が大きく異なるからです。

まず、一括で受け取る場合は、退職金と同じ課税方法になります。会社の退職金と合わせて、勤続年数が20年以下までは1年あたり40万円(80万円未満の場合は80万円)、20年超からは1年あたり70万円が控除できる退職所得控除という仕組みがあります。一方、年金形式で受け取ると、厚生年金などの公的年金と合わせて、年間120万円以下なら非課税になる公的年金等控除という仕組みがあります(65歳以上で受け取る場合)。

いずれにせよ、どちらも税金が優遇される制度ですが、自分の退職金や公的年金の金額も計算に含めないと税額は算出できません。そのうえ、受け取りパターンも「一括受け取り」と「年金受け取り」、あるいは「併用受け取り」など複数ありますから、計算が非常に複雑になるのです。

自分の会社の年金制度を知っておこう

現在、多くの会社で企業年金制度が見直されています。今までの主流は確定給付企業年金で、企業は社員に年金額を約束し、その原資を資産運用によって準備してきました。しかし、予定していた利回りを確保できず、年金の積み立て不足が発生しはじめたのです。そこで、現在は、確定給付企業年金から確定拠出年金に移行するなど、企業年金制度が変化しています。

企業年金制度は少し複雑ですが、自分の大切な老後資金に関係する制度です。勤めている会社には、厚生年金のほかに企業年金制度はあるのか、その内容はどのようなものか、一度、確認をしておきましょう。老後不安の解消につながります。

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前田菜緒
保険代理店で生損保を経験し、独立。得意分野は資産運用、年金など社会保障、ライフプラン構築。 セミナーや相談は、オンラインを利用して夜も行っている。保有資格はCFP、DCプランナー2級、公的保険アドバイザー
保険代理店で生損保を経験し、独立。得意分野は資産運用、年金など社会保障、ライフプラン構築。 セミナーや相談は、オンラインを利用して夜も行っている。保有資格はCFP、DCプランナー2級、公的保険アドバイザー
 

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