もらってうれしいボーナスですが、その明細を見て「あれ?思ったより天引きされていて手取りが少ない……。」と感じたことがある方もいるかもしれませんね。
どのような内容のものがいくら引かれているのか、賞与金額に対する社会保険料の内訳と金額の目安、その計算方法について解説します。
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賞与(ボーナス)からも社会保険料が引かれるの?
毎月のお給料と同じように、ボーナスからも社会保険料や税金が引かれます。「支給額」が、そのまま「手元に入ってくる金額」になるわけではないのです。
どのようなものが引かれているのか、見てみましょう。
賞与(ボーナス)から引かれるものは何?
ボーナスから天引きされているのは、以下の2つです。
- 社会保険料
所得税 ちなみに住民税は、毎月のお給料からは天引きされますが、ボーナスからは引かれません。
今回は、特に「社会保険料」について詳しく解説していきます。
〈住民税について詳しく知りたい方はこちら〉
住民税は給与から天引きされる?今さら聞けない住民税の基本そもそも社会保険料とは?
老後や病気になったときなど、お金が必要な人が困らないようにするために国が用意しているさまざまな制度のことを、まとめて「社会保険」と呼んでいます。
その社会保険制度を運営していくために徴収されているのが、「社会保険料」です。
給料やボーナスから引かれる社会保険料には、以下のものがあります。
- 厚生年金保険料
- 健康保険料
- 介護保険料
雇用保険料 どれも名前は聞いたことのあるものばかりですよね。細かく内容を見ていきましょう。
厚生年金保険料 ・老後にもらえる「老齢厚生年金」
・障害が残ったときにもらえる「障害厚生年金」
・家族に先立たれたときにもらえる「遺族厚生年金」
これらのための保険料です。健康保険料 病院で保険証を出せば原則3割負担で受診できますが、
それは健康保険に加入しているからです。
そのほか、
・医療費の負担が一定額を超えたときに、
その超えた分が支給される「高額療養費」
・病気やケガで会社を休んだときの「傷病手当金」
・「出産育児一時金」や「出産手当金」など
これらも健康保険から給付されます。介護保険料 40歳になった月から引かれ始めるのが介護保険料です。
もし介護が必要な状態になったときに、
訪問介護やデイサービスなどを原則1割負担で
受けることができます。雇用保険料 ・失業したときにもらえる「基本手当(失業手当)」
・キャリアアップのために勉強したときにもらえる
「教育訓練給付金」など
仕事を安定的に確保できるよう支えるためのものです。
社会保険料は、これら制度を維持していくために使われています。
ちなみに社会保険料は自分だけでなく勤務先の会社も、同額もしくは同額以上を負担してくれています。
昔はボーナスから社会保険料を払わなくてもよかった!?
実はボーナスから引かれる厚生年金保険料や健康保険料は、制度改正や保険料率の引き上げの影響で、以前より高額になっています。
2003年より以前は賞与(ボーナス)からはほとんど社会保険料は引かれていなかった
2003年より前は、「社会保険料は毎月のお給料から引かれるもので、ボーナスからは引かれない」と考えている人が大半でした。
それもそのはず、給与に対する厚生年金の保険料率は17.35%でしたが、賞与に対しては1995年4月から2003年3月までは、「特別保険料」として1%かかるだけだったからです。
賞与(ボーナス)から社会保険料が引かれるようになった理由とは?
以下の2人は年収が同じですが、2003年以前は後者のほうが保険料負担は少なかったのです。
- 年収400万円(月給30万円、ボーナス40万円)
年収400万円(月給20万円、ボーナス160万円) そのため、ボーナスの比重をできるだけ大きく設定して、社会保険料の負担を逃れようとする企業が現れ始めます。
それでは不公平だということで、2003年4月から月給でもボーナスでも保険料率が同じになるよう総報酬制という制度が導入されました。
保険料率は見直しされる
社会保険料は、年齢ごとの人口比率や医療費の増減などを反映するため、定期的に見直しされています。4つの社会保険料の動向は次のとおりです。
・厚生年金
これまで年金制度の維持のために、2004年から年々じわじわと保険料が上がり続けていましたが、2017年に18.3%になったところで保険料率の引き上げが終了しました。
・健康保険
健康保険の運営主体は、複数あります。たとえば全国健康保険協会(協会けんぽ)では、以下のように都道府県ごとに毎年細かく保険料を見直しています。

・介護保険
介護保険は2000年にスタートした、比較的新しい制度です。当然、それ以前は介護保険料の徴収はありませんでした。
制度開始当初と比べて介護を受ける人が増え、それを支える若い人が少なくなっていることから、介護保険料も上昇傾向にあります。
・雇用保険
雇用保険料も毎年見直しが検討されますが、2015年頃から減少傾向にあり、現在は過去最低の料率まで下がっています。
今後も保険料の上昇が見込まれる
少子高齢化や医療の進歩などの影響で、国の社会保障関連の出費は増え続けていて、社会保険料も基本的には高くなっていくことが予想されます。
「天引きされる金額はできるだけ少ないほうがありがたい」と誰もが思うでしょう。しかし、社会保険料が上がることは、単純に損とは言い切れません。
たとえば、2003年に制度改正があるまで、ボーナスから差し引かれていた厚生年金の特別保険料0.5%(労使折半により本人負担折半額)は、将来受け取る年金額に反映されていませんでした。
しかし、現在はボーナスから引かれる厚生年金保険料も、年金の受取額に反映されるようになっています。
これは、毎月の給料だけでなくボーナスからも保険料をしっかり払うようになったことで生まれたメリットと言えるでしょう。
社会保険料を計算するときは、このような制度改正や見直しが頻繁にあることを前提に、最新の数値を確認するようにしましょう。
賞与(ボーナス)から引かれる社会保険料の計算方法は?
賞与から引かれる社会保険料は、どのように計算されているのでしょうか。何がいくら引かれるのかを計算する方法があります。
まずは「額面」と「手取り」について理解しよう
給与やボーナスの金額について考えるときに意識しておきたいのが、「額面」と「手取り」です。
額面 | 会社が支給する金額 |
手取り | 額面から税金や社会保険料を差し引いたもの (実際に自分の手元に入ってくる金額) |
給与明細には、どちらの金額も記載されているはずです。「ボーナス」と言っても、額面と手取りのどちらを指しているのかによって、金額がかなり変わることもあるので注意しましょう。
一般的に、手取りは額面の8割程度になります。正確な天引き額を知りたい方は、自分で計算することもできます。
「標準賞与額」とは?
ボーナスから引かれる社会保険料を計算するうえで重要になるのが、「標準賞与額」です。
標準賞与額 | ・税引き前の賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた金額のこと ・厚生年金や健康保険では、この標準賞与額に基づいて 保険料を計算する |
ここでいう「賞与」とは、年3回以下の回数で支給されるものを指します。支給回数が年4回以上になると、標準賞与額ではなく、毎月のお給料と同じ「標準報酬月額」に含めて計算することになります。
また見舞金や結婚祝い金など、「労働の対償」として支給されるものではないお金も、賞与には含まれません。
出典:全国健康保険協会『標準報酬月額・標準賞与額とは?』
では、社会保険料の具体的な計算方法を見てみましょう。以下で紹介するそれぞれの保険料率は、2020年5月現在のものです。
厚生年金保険料の計算方法
賞与に対する厚生年金保険料は
「標準賞与額×保険料率」
という簡単な式で計算することができます。厚生年金保険料の保険料率は、18.3%です。
出典:日本年金機構『厚生年金保険料額表』
厚生年金保険料は会社と本人が半分ずつ負担して支払う労使折半のため、賞与から引かれる保険料(本人負担分)は「標準賞与額×保険料率×2分の1」となります。
例として賞与額に対する自己負担分を計算すると、下表のようになります。
標準賞与額 | 自己負担する厚生年金保険料 |
---|---|
25万円 | 2万2,875円 |
50万円 | 4万5,750円 |
100万円 | 9万1,500円 |
150万円以上 | 13万7,250円(上限) |
厚生年金保険料の計算では、賞与の支給1回当たり150万円(同じ月に2回以上支給された場合は合算)が上限になります。
〈厚生年金保険料について知りたい方はこちら〉
厚生年金保険料はなぜ高い?会社員の年金額を国民年金と比較
健康保険料の計算方法
健康保険料の計算は、厚生年金保険料よりも複雑です。
というのも、計算式は以下のとおりで厚生年金と同じなのですが、この“保険料率”が人によって違うのです。
「標準賞与額×保険料率」
「健康保険」には、その運営主体によって以下の種類があり、保険料もそれぞれ異なります。
〇全国健康保険協会(協会けんぽ)
〇健康保険組合
〇共済組合
・国民健康保険
・後期高齢者医療
雇用されている方なら、上から3つのどれかに加入しているケースがほとんどでしょう。自分がどの健康保険に加入しているのかは、保険証を見ればすぐにわかりますよ。
最も加入者が多いのが国健康保険協会(協会けんぽ)、大企業の従業員に多いのが健康保険組合、公務員なら共済組合というように分かれています。
協会けんぽは複雑で、都道府県ごとに異なる保険料率が設定されています。
基本的に10%前後にされており、厚生年金と同様に労使折半なので、自己負担額の目安は以下のようになります。
標準賞与額 | 自己負担する健康保険料(目安) |
---|---|
25万円 | 1万2,500円 |
50万円 | 2万5,000円 |
100万円 | 5万円 |
150万円 | 7万5,000円 |
健康保険では、賞与の上限額は年間(毎年4月1日から翌3月31日まで)の累計で573万円です。厚生年金の上限額とは異なるので、注意してください。
介護保険料の計算方法
介護保険料は、健康保険料に上乗せする形で徴収されます。
計算式は、以下のとおりです。
標準賞与額×保険料率(1.73%)
保険料率は全国一律で1.73%と決められており、こちらも労使折半です。
出典:全国健康保険協会『協会けんぽの介護保険料率について』
標準賞与額 | 自己負担する介護保険料 |
---|---|
25万円 | 2,162円 |
50万円 | 4,325円 |
100万円 | 8,650円 |
150万円 | 1万2,975円 |
介護保険料の支払いは40歳からなので、40歳未満の方は徴収されません。
また、65歳以上の方は原則として年金から天引きされることになるため、ボーナスからの天引きではなくなります。
〈介護保険料についてはこちら〉
40歳なのにもう介護?「介護保険料」を健康保険と比較して考える
介護医療保険って?受取人がどう関係?保険料控除の申告の仕組み
雇用保険料の計算方法
雇用保険料の計算式は、以下のとおりです。
賞与総額×保険料率
厚生年金や健康保険と違い、掛けるのは「保険料率」であり「標準賞与額」ではないので注意は必要です。
雇用保険の「保険料率」は、実は勤務先の業種によって異なります。業種は、以下の3つに分類されます。
- 一般
- 農林水産、清酒製造
- 建設
それぞれの保険料率は、以下のとおりです。
(厚生労働省 「令和2年度の雇用保険料率」より引用)
厚生年金保険料や健康保険料は労使折半ですが、雇用保険料は会社のほうが多く負担しています。
ちなみに「労災保険」も社会保険ですが、その保険料は会社が全額負担しているため給料やボーナスから天引きされることはありません。
一般の業種の会社にお勤めの場合、雇用保険の自己負担額は以下のようになります。
標準賞与額 | 自己負担する雇用保険料 |
---|---|
25万円 | 750円 |
50万円 | 1,500円 |
100万円 | 3,000円 |
150万円 | 4,500円 |
賞与(ボーナス)の手取りをシミュレーションしてみよう!
計算方法がわかったら、実際に手取り額を計算してみましょう。
月給や賞与額を入力すると、自動で年金保険料を計算してくれるサイトもあり、手軽にシミュレーションをすることもできますよ。
(参考:「高精度計算サイト - keisan - CASIO」)
ボーナスから引かれる社会保険料の計算例
具体例を見てみましょう。以下の<Aさん>の手取りを計算してみます。
<Aさん>
- 40歳
- 独身
<Aさんの勤務先>
- 小売業
- 中小企業
- 東京本社
<Aさんの収入>
前月給与:30万円(社会保険料控除後)
賞与総額:60万円(額面)
<Aさん>の条件では、それぞれの計算式と社会保険料は以下のようになります。
・Aさんの厚生年金保険料
標準賞与額60万円 × 保険料率18.3% × 2分の1(労使折半)
=5万4,900円
・Aさんの健康保険料
標準賞与額60万円 × 保険料率(協会けんぽ・東京)9.87% × 2分の1(労使折半)
=2万9,610円
・Aさんの介護保険料
標準賞与額60万円 × 保険料率1.79% × 2分の1(労使折半)
=5,370円
・Aさんの雇用保険料
賞与総額60万円 × 保険料率(一般の事業)0.9% × 3分の1(労使で分担)
=1,800円
4つの社会保険料を合計すると、Aさんのボーナスから引かれる社会保険料額は9万1,680円であることがわかりました。
しかし、賞与総額60万円から社会保険料分を差し引いた残りの50万8,320円が手取り金額かというと、そうではありません。
冒頭でご紹介したとおり、ボーナスから引かれるのは社会保険料だけではなく、ここからさらに所得税も引かれることになるからです。
所得税の計算方法
所得税を計算するには、まず賞与総額から社会保険料を差し引いた額(Aさんの場合50万8,320円)を算出します。
この金額に所定の税率を掛ければ、天引きされる所得税額がわかります。
ただし、所定の税率は「賞与支給の前月の給与(社会保険料天引き後)」と「扶養家族の数」によって変わります。
税率を確認するには、以下の表であてはまるところを探します。

Aさんの場合、以下の情報をもとに表を確認します。
- 前月の社会保険料天引き後の給与は、30万円。この金額は自分で計算しなくても給与明細を見ればすぐにわかります。
Aさんは独身の一人暮らしなので、養っている家族の数はゼロです。 まず、「扶養親族0人」の列を見ます。
Aさんの前月の給与は「300千円(30万円)以上、334千円(33万4,000円)未満」なので、その行を見つけ、そのまま一番左の列まで目線を移すと「8.168」という数字があります。
これで、Aさんの税率は8.168%であることがわかります。この税率は、前月の給与が高い人や扶養家族が少ない人ほど高くなるように設定されています。
・Aさんの所得税
賞与総額から社会保険料を差し引いた額50万8,320円 × 8.168%
=4万1,519円Aさんのボーナスから引かれる所得税は、4万1,519円であることがわかりました。これに社会保険料の天引き分9万1,680円を合わせると13万3,199円になります。
賞与総額60万円 - 天引き分13万3,199円 = 46万6,801円
これで、Aさんの賞与の手取りは46万6,801円と計算できました。
〈ボーナスの手取り額を知りたい方はこちら〉
ボーナスの税金は何からいくら引かれる支払う保険料や税金を把握し、その内訳やメリットに興味を持とう
ボーナスを受け取ったら、一度よく明細をチェックしてみてください。見方がよくわからなければ、会社で給与計算を担当している部署に確認してみましょう。
社会保険料や所得税は、給与から自動的に引かれているので、なかなか細かい内訳まで意識しづらいかもしれません。とはいえ、自分が稼いだ貴重なお給料から支払うものです。
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