確定拠出年金は、税制上のメリットもあり、リタイア後の生活をより豊かにするための資産形成制度の一つです。企業型と個人型があり、2017年1月から20歳以上60歳未満のほとんどの人が加入できるようになりました。積み立てた年金資金は、原則60歳になるまで受け取ることができませんので、60歳前に会社を退職する時は、継続した資産運用のために手続きが必要です。確認しておきましょう。

確定拠出年金は退職後の進路により手続きが異なる

(写真=PIXTA)

確定拠出年金の年金資産は、移し替える手続きをすることで持ち運びすることができます。このことを「ポータビリティ」といいます。

日本の企業は、長い間退職金制度を用いてきました。退職金制度は、老後の生活を支える資金の一部として、会社を退職する時にまとまったお金を受け取る制度です。しかし、景気や運用成果が思うように得られないことから企業型確定拠出年金を導入する会社が増えてきました。

企業型確定拠出年金に加入している人が60歳未満で退職する場合は、
①別の会社に転職する。
②自営業者になる。
③公務員になる。
など、転職先等に応じて、iDeCoや転職先企業の企業型確定拠出年金に年金資産を移し替える手続きが必要になります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している人は、登録事業所変更、被保険者種別変更、事業主証明などの手続きをすることで、引き続き掛金を拠出することができる場合もあります。また、転職先の会社が企業型確定拠出年金を実施している場合は、移換の手続きが必要になる場合もあります。

加入者自身が資産運用するパターン

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企業型確定拠出年金は、会社が退職金制度として導入しているものですので、掛金は会社が負担してくれます。金融機関は会社で選択されていますし、運用商品についても会社で用意してくれているなかから選びます。

退職後の進路が
1)企業年金制度を実施していない会社に転職する
2)厚生年金基金、確定給付企業年金を導入している会社に転職する
3)自営業者になる
4)公務員なる

などの場合は、iDeCoへ積み立てた年金資産を移換することになります。2017年以降は、会社が厚生年金基金・確定給付企業年金を導入している場合でも、12,000円までiDeCoで掛金を拠出することができるようになりました。

保有している資産は、一度すべて解約して現金化されてから移換されるので、改めて運用商品を選んで配分を指定します。

iDeCoに加入する場合、自分で金融機関を決めiDeCo口座を開設して毎月の掛金を決定します。自分で運用商品を選んで移管されてくる年金資産を含めて自分で運用することになります。掛金を拠出せず運用のみ行う運用指図者になることもできます。

企業型を運用している企業に転職する場合は?

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現在、会社の企業型確定拠出年金に加入している場合、企業型確定拠出年金加入者の資格は退職日翌日に喪失します。転職先の会社が企業型確定拠出年金を実施している場合は、その企業型確定拠出年金へ年金資産を移換することができます。転職先の会社の人事、労務等の担当者に移換手続きを申し出ましょう。

現在、iDeCoの加入者または運用指図者の人も、転職先の企業型確定拠出年金へ年金資産を移換できます。iDeCo口座のある金融機関に「加入者資格喪失届」を提出し、転職先の担当者に移換手続きを申し出ましょう。

転職先の会社の規約で企業型確定拠出年金とiDeCoへの同時加入が認められている場合があります。その場合は毎月の掛金は20,000円までになりますが、企業型確定拠出年金とは別にiDeCoに移換して拠出する、転職先へは移換せずに現在加入のiDeCoも継続する、という選択も可能です。

確定拠出年金の手続きは退職後6ヵ月以内に行う

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企業型確定拠出年金に加入していた人が会社を退職して加入者ではなくなった場合は、退職日の翌日を資格喪失日として、その翌月から6ヵ月以内に、積み立てた年金資産をiDeCoまたは他の企業型確定拠出年金に移換する手続きをしましょう。一定要件を満たす場合には脱退一時金の請求ができます。いずれにせよ、必ず手続きをしましょう。

手続きが行われなかった場合は、国民年金基金連合会に自動移換されます。自動移換されると、資産の運用は行われない上に管理手数料がかかるので、資産は減っていきます。また自動移換の期間は、通算加入者等期間に含まれません。受給可能年齢が遅くなる場合があります。

主婦になる場合も手続きが必要!気をつけて

(写真=PR Image Factory/Shutterstock.com)

主婦になる場合も、企業型確定拠出年金に加入していた人は、退職後6ヵ月以内にiDeCoに年金資産を移換する手続きを行いましょう。iDeCoに加入し今後も掛金を拠出することができます。iDeCoに加入している人は、第3号被保険者となりますので、「加入者被保険者種別変更届」を金融機関に提出しておきましょう。リタイア後の生活を支える大切な資産です。仕組みを知って無駄のないようにしたいですね。

文・藤原 洋子(ファイナンシャル プランナー)

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