日本は国民皆年金制度を持つ国であり、基本的に20歳になれば、公的年金への加入が義務付けられている。加入する公的年金制度は職業等によって異なり、会社員や公務員であれば厚生年金へ、自営業や無職の方は国民年金へ保険料を納付することとなる。ただ、就職や退職のタイミング等により、厚生年金と国民年金を重複して納付してしまうケースも存在する。その場合はどうすれば良いのだろうか。

厚生年金と国民年金の加入、脱退とは?

まずは厚生年金と国民年金が重複する理由を知る必要があるが、そもそも厚生年金や国民年金への加入、脱退はどのように行われるのであろうか。

日本の公的年金制度では、基本的に日本国内に住む20歳から60歳のすべて人が保険料を納め、その保険料を高齢者などへ年金として給付する仕組みだ。加入する公的年金は職業等によって、厚生年金と国民年金に分けられる。

まずは厚生年金への加入や脱退であるが、これは就職もしくは退職時に勤務先が代行して行うこととなる。厚生年金加入資格のある雇用者の事務手続きは、事業主の義務となっており、就職したのに厚生年金へ未加入であるというケースや、退職したのに厚生年金へ加入し続けているというケースは基本的に起こらないと言える。

次に国民年金であるが、こちらは加入の場合には自身で手続きを行う。20歳になった時は年金機構から送付される「国民年金被保険者資格取得届書」に必要事項を記入して居住地の市区町村役場の国民年金担当窓口へ提出することで、退職した時等には、自ら役場や窓口に出向く必要がある。

また脱退の場合、すなわち、厚生年金へ加入する際には、先に述べたように勤務先を通じて国民年金の脱退手続きも行われるため、自身で手続きを行う必要はない。なお、国民年金加入者が海外へ転出し、その期間が5年以上の場合は国民年金からの脱退となるが、こちらは自身での手続きが必要となる。

このように、最後のケースを除いて、厚生年金・国民年金共に、脱退手続きは自身で行う必要がないため、手続きの失念や遅れによって、厚生年金と国民年金が重複するケースは起こり得ない。

なぜ重複は起こるのか?

では、重複が起こるケースとはどのようなものであろうか。

最も多いケースは、国民年金保険料を前納している場合であろう。保険料の前納を行った国民年金の加入者が、その期間中に就職して厚生年金の加入者になった場合、国民年金をすでに納付してしまっている期間中に厚生年金の保険料納付が始まることとなり、重複が生じる。

2017年度における国民年金の保険料は、1月当たり1万6490円となっている。ただ、前納した場合においては、前納する期間によって一定の割引が行われる。例えば2年分をまとめて口座振替で前納した場合、合計で1万5640円の割引となる。厚生年金と国民年金の重複は、この前納制度を活用したことによって生まれることが多い。