会社からもらう給与明細を見ると、毎月、厚生年金保険料が天引きされていますよね。厚生年金保険料は、定められた保険料率によって決まりますが、少しずつ上がっていたことをご存じですか?保険料率の改定は2017年9月で終了しましたが、今後も厚生年金保険料は上がらないのでしょうか。厚生年金保険料について解説します。

厚生年金の保険料率はしばらく改定なし

(写真=PIXTA)

厚生年金の保険料率は、あまりなじみのない言葉ですよね。初めて聞くという人も多いと思います。これは、会社員の皆さんが納めている厚生年金保険料を決めるときに使われる数値のことです。

厚生年金保険料率は、2004年以前は少なくとも5年に1回は見直すことが決まっていました。リタイア世代が受け取る年金と現役世代の納める保険料について、負担のバランスを適切に調整して、年金財政を長く保てるようにするためです。

ところが、急激に少子・高齢化が進んだことで、これまでどおりに年金の給付を行おうとすると、厚生年金の保険料を上げ続けなければならないことがわかってきたのです。そこで、保険料率を段階的に引き上げた後、将来的に固定する「マクロ経済スライド」という方法で、自動的に年金給付の金額を調整する仕組みが考え出されました。

年金制度改正で2004年10月より、保険料率は13.934%から毎年0.354%ずつ上がりましたが、2017年9月に上限の18.30%に達したので引き上げは終了しました。今後は、定められた財政収入の範囲で年金給付を行っていきます。

18.30%の負担は大きく感じられますが、実際に納付する厚生年金保険料は、会社と本人が半分ずつ負担します。そのため、給与から天引きされる金額は、給与平均から算出される「標準報酬月額」に9.15%をかけた額です。

保険料率が変更なしでも納付金額が変わる場合

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保険料率の変更がないのに突然、保険料がそれまでの月と変わることがあります。厚生年金保険料は、給与やボーナスの額によっても変わるので、給与の額が変わると保険料が変わります。この厚生年金保険料の変更に関わる給与平均額のことを「標準報酬月額」といいます。これは31等級にランク分けされており、以下のような場合に厚生年金保険料が変わります。

資格取得時の決定

入社したときに標準報酬月額が決定します。5月31日までに入社した場合はその年の8月まで、6月1日から12月31日までに入社した場合は翌年の8月まで、その標準報酬月額が適用されます。入社後、4~6月までの間に給与が変わった場合、9月の定時決定によって標準報酬月額が変わることがあります。

定時決定

7月1日現在の被保険者全員に対して、4~6月の3ヵ月間の給与平均額をもとに標準報酬月額を決定します。これを「定時決定」といい、9月から翌年の8月まで適用されます。

随時改定

昇給などで基本給が変わった、かつ、変更月から3ヵ月間に受け取った給与の平均額から算出した標準報酬月額の等級が、これまでと比べて2等級以上変わったなどの条件をすべて満たしたときは、定時決定を待たずに標準報酬月額が変更されます。これを「随時決定」といい、定時決定とはまったく別の時期に厚生年金保険料が変わることになります。

育児休業等終了時の改定

育児休業終了日の翌日が含まれる月から3ヵ月間に受け取った給与をもとに算出した標準報酬月額が、育児休業を取得する前と比べて1等級以上の差があれば、本人が申し出ることによって標準報酬月額を改定し、4ヵ月目から適用されます。

保険者決定

4~6月に病気欠勤でまったく給与をもらわなかった、3ヵ月以前の給与を遅れて受け取ることになったなど、給与の平均額を計算できない場合には、以前の標準報酬月額がそのまま継続されることになります。

標準報酬月額に影響する給与項目は?

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標準報酬月額の改定の対象となる給与は、基本給をはじめ、通勤手当や家族手当など、会社から現金や現物で労務の対象として支払われるものすべてになります。残業代などの変動する給与だけの変化で、標準報酬月額が2等級以上変わったとしても、標準報酬月額の改定はありません。改定の対象となる給与項目の例は以下になります。

基本給、能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、勤務地手当、物価手当、日直手当、宿直手当、家族手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、早出残業手当、継続支給する見舞金など。

現物給与の場合は、住宅貸与、食事、自社製品などがあります。

おかしいなと思ったら総務に相談を

(写真=PIXTA)

厚生年金保険料が変わることで、自分の負担額がいくら増えるかを確認しておくと、対策も考えることができますね。気になることがあれば総務課に相談しましょう。

文・藤原洋子(ファイナンシャル・プランナー)

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