保険について調べていると似た用語が出てきて戸惑うことがある。それぞれの違いを知らないと、自分が「保険金」と思っていた補償額と違ったり、課税関係が異なったりすることもあるので要注意だ。また、適切な保険の金額設定についても把握しておこう。

「保険金額」と紛らわしい用語との違い

保険について、その「保険」の「金額」は非常に気になるところだろう。しかし「保険」の「金額」とは何を指すのだろうか。保険会社に支払わなければならない金額だろうか、それとも保険会社から受け取る金額だろうか。また、保険会社のサイトにある「保険金額」と「保険価額」とは何が違うのだろうか。そして、保険の「金額」はどのように決めたらよいのだろうか。ここでは保険に関するお金の用語と基礎知識を明確に理解しよう。

「保険金額」「保険金」と「保険料」との違い

日常生活で「自分は保険金を〇円払っている」「家計の見直しで保険金の負担を減らしたい」と表現する人がいる。相手に通じるなら目くじらを立てる必要はないが、正確に言えば間違いだ。

保険金は保険会社から契約者に対して支払われるものだ。保険金の金額という意味で「保険金額」という言葉も使う時も同様だ。厳密な意味での「保険金額」は損害保険の契約上の金額を指すが、これも保険会社から支払われるという、お金の流れの方向は同じだ。

個人が「保険を払っている」というのは「保険料」と呼ぶのが正しい。保険の契約時に決めた保険金(保険金額)に合わせて、契約者は保険会社に保険料を支払う。個人の家計から保険会社へ支払われているのが保険料だ。

損害保険での「保険金額」と「保険価額」との違い

損害保険では「保険金額」と並んで重要な用語に「保険価額」というものがある。生命保険では値段がつけられない「ヒト」の生死を扱うが、損害保険では偶然の事故で生じた損害を扱う。損害保険の対象は「モノ」であることが多く、そのモノは金銭的な値段に置き換えることができる。この保険を掛ける対象のモノの価格を「保険価額」という。火災保険や自動車保険であれば、その家や車の値段ということになる。

家や車などの保険価額は、時価か再調達価格のどちらかで考える。時価とは、新品で購入した状態から古くなって価値が目減りした分を差し引いて計算したものだ。再調達価格とは、再び同じようなモノを購入する場合の価格をいう。

被った損害が保険価額全額でないこともある。「半分しか壊れていない」などの場合だ。だから、保険価額は保険事故が発生したときに被るであろう損害の最高見積額とされる。

一方、保険金額は契約時に決める金額だ。必ずしも保険価額と同じとは限らない。保険金額が保険価額よりも大きい場合を「超過保険」、同額のものを「全部保険」、保険金額が保険価額より小さい保険を「一部保険」という。

契約書に書かれた保険金額は、保険会社が支払う上限だ。損害保険では「利得禁止の原則」という決まりがある。損害保険では実際の損害以上の保険金を受け取ってはならない。いわゆる「焼け太り」を禁止しているのだ。

よって、実際に保険事故が起こって保険会社から支払われる「保険金」の額は、契約上の保険金額を上限に、保険価額のうち現実に損害を被った額となる。ただし、一部保険ではこれより低い額となる。

なお、損害保険で保険会社から受け取った金額は原則非課税だ。「利得禁止」により、保険金では損失の穴埋めをしただけで何の利益も得ないと考えるとよい。もっとも、損害保険会社の中で扱っている商品の中でも、死亡保険金や積立型保険の満期返戻金などは生命保険同様課税の対象となる。