創業43年目になる、老舗コーヒーロースター『サンパウロコーヒー』。東京蒲田に本店、品川区内に焙煎所を構え、こだわりのコーヒーを販売しています。また、ご家庭で楽しみたいお客様から自社プライベートブランドの商品を開発したい企業様まで、コーヒーにこだわる多くの方からの相談に答え続けてきました。

今回は、創業者である久野社長に『サンパウロコーヒー』が大切にし続けているコンセプトや特徴、今回限りのオリジナルコーヒーアソートのために開発した新しい商品の魅力についてお話を伺いました。

両親、そしてカリスマから学んだ技術

サンパウロコーヒーが作り上げた“ビタースイートブレンド”の魅力に迫る
(画像=Cafendより引用)

——まずは、『サンパウロコーヒー』創業のきっかけを、教えてください。

私が小学5年生の頃、まだコーヒーが1杯80円だった時代に、両親が喫茶店を始めました。中学校になり、期末試験などの勉強中に皆さんがインスタントコーヒーで目を覚ましていたように、母が必ずレギュラーコーヒーを用意してくれて、眠気覚ましに飲んでいたことが、きっかけになります。

その当時から、いつしか自分もカウンターに入ってみたいと子どもながらに考えていて、想いを叶えるようにして今の仕事に入りました。

——最初は、ご両親のお店を継いだということでしょうか?

すぐに継いだわけではなく、親子といってもキチンと修行に入り、イチから学びました。当時は漢字で喫茶店と書くような店がほとんどでしたが、42~3年前には珈琲専門店という名前に変わり、抽出方法も布フィルターで抽出を行うネルドリップから、熱で押し上げたお湯とコーヒー粉を混ぜて抽出するサイフォンという方法に変わった時期です。

これが世間でいう、コーヒーの“ファーストウェーブ”になります。

サンパウロコーヒーが作り上げた“ビタースイートブレンド”の魅力に迫る
(画像=Cafendより引用)

——まだ、“ファーストウェーブ”という言葉自体もなかった時代ですよね。

そうですね、“1970年代の味”などの呼び方をしていましたが、現在ではオシャレな呼び名に変わりました。その頃に、一日に何千人単位のお客様が来店するような非常に有名なコーヒー屋さんがあり、私も勉強しに行ったことで、サイフォンのプロフェッショナルになることができました。

「その人の抽出したコーヒーが飲みたい!」という理由で行列ができ、カウンターに座って華麗な技を見ることが、コーヒー好きの楽しみになっていた時代でした。

——カリスマと呼ばれる方々が活躍していたのですね。

当時のカリスマたちは、他のメニューを用意せず、その分コーヒーを落とすことだけに全ての力を注いでいました。当時の私は業務用の卸事業をやっていたこともあり、皆さんと繋がって、今でもその中の何人かとお付き合いが続いています。

“ファーストウェーブ”と呼ばれた時代における特徴の一つが、看板を貸すことや値下げ、コーヒーミルのレンタルなど、サービス面での競争は一切せず、シンプルに配合や味などで他店と競い合い、みんなが至極の一杯にこだわり続けていた良き時代です。

——当時は、どのようなコーヒーが主流になっていましたか?

ネルトリップのブレンドレシピは、4:3:2:1。4と3がブラジルかコロンビア、2がモカとなっています。エチオピア産のモカは本当に甘い香りがして、とっても美味しいですが、スペシャルティーグレードなどと同じく高額になってしまうため、今ではなかなか使われていません。

最後の1はマンデリンかジャバロブスタです。そこからサイフォンが主流に変わってくると、それに合わせるように焙煎度合いや配合も変わっていきました。WIB(ロブスタ)やマンデリンは使わないで、和かいグァテマラを使うようになったのが特徴です。その後、焙煎のアレンジとして熱風式や直火式など、最適な方法を選別しながら差別化をしていきました。

ヨーロッパで体験した、素晴らしいコーヒーの数々

サンパウロコーヒーが作り上げた“ビタースイートブレンド”の魅力に迫る
(画像=Cafendより引用)

——『サンパウロコーヒー』の特徴について、教えてください。

35年前に参加した“ヨーロッパ・コーヒーミッション”で、海外を回って身に付けた様々なシーンで楽しめるコーヒーをご提案・ご提供していることです。もちろん、コーヒーの原産国、消費国をどちらも回ったので、素材を選ぶ段階でもノウハウを活かせています。

産地では、実際に農園で生産者の方と一緒に種をまき、収穫し、それを果実のまま乾燥させる「ナチュラル」と果実を剥いて洗ってから乾燥させる「ウォッシュド」に仕分ける工程も経験しました。当時は3カ国ぐらい回ると全ての製法が学べる時代でしたので、生産という観点では、ほとんどの製法を目で見て、肌で感じることができたと思います。

——プログラムの中で、印象に残っていることはありますか?

約1か月かけて消費国を回ったことです。まずはドイツに到着し、ジャーマンブレッドとジャーマンコーヒーを味わいました。元々好きだったので、本場の味を確かめられたことに感動したことを覚えています。

次にフランスのパリに行きまして、“フランスの朝はカフェオレで始まる”という当時描かれていたイメージをそのまま体験することができました。優雅にコーヒーを楽しんでいる、その空間やシーンがより一層味を引き立たせることを実感した瞬間です。

サンパウロコーヒーが作り上げた“ビタースイートブレンド”の魅力に迫る
(画像=Cafendより引用)

——ドイツ・フランスでは、貴重な経験をされたのですね。

フランスだけに限らず、次に滞在したオーストリアのウィーンでも、学びの連続でした。世界でも有名なウィーン菓子も楽しみでしたが、やはり代表的な珈琲である“アインシュペンナー”に感動したことは言うまでもありません。

日本でいうとウインナーコーヒーに近いもので、大きいグラスにちょっとハード系のホットコーヒーが入っていて、その上に独特のホイップクリームをたっぷり浮かべて飲むというスタイルです。それにアップルパイに近い“アプフェルシュトゥルーデル”や“ザッハトルテ”を合わせて、食べたときは衝撃が走りました。

——その経験が、現在のコンセプトに繋がっているのですね。

インスピレーションを得ることができた私は、帰国後の1988年に『サンパウロコーヒー 大森店』をコーヒーとケーキのお店としてオープンしました。ウィーンのカフェをコンセプトにして、2人のパティシエに自分の理想のケーキを作ってもらい、私の焙煎したコーヒーと合わせて楽しめるお店です。

甘味との兼ね合いや、朝のコーヒー、午後のコーヒーなどシーンごと違った一杯を提供していました。2005年まで続けましたが、頑張りすぎて体調を崩してしまい、それが現在メインで行っているネット販売に繋がっています。

——全国から相談の問い合わせが絶えないと伺いました。

ネット販売を始めてから、「カフェを立ち上げたい」「専売店をやりたい」など、相談の問い合わせがたくさんあり、それに答えるため、時間が許す限り全国を回って指導していました。そこから、各企業様のプライベートブランドを商品化することの面白さに気が付き、幅広く展開しています。

イタリアン、フレンチなど、その店の特徴に応じたブレンドを作ったり、焙煎を使うコーヒーマシンに合わせたり、商品作りをすることが大好きです。なので、うちのコーヒーを置いてもらうというよりは、「一緒にベストなコーヒーを生み出していこう!」という姿勢で、いつも協力させていただいています。