この記事では、高等学校等就学支援金制度の仕組みと対象者、さらに、対象となるためのポイントをまとめました。

高等学校等就学支援金制度とは

高等学校等就学支援金制度は、高校などに通う生徒に対し、返還不要で国が授業料の一部または全部を支援する制度です。主に、両親などの収入(世帯所得)と進学(通学)する学校の種類によって、支援の可否や支給金額が異なります。

2020年4月に制度改正が行われ、一定の条件を満たす世帯の就学支援金の上限額が“私立高校の平均授業料水準”まで引き上げられたことで「私立高校授業料の実質無償化」として話題になりました。具体的に、どのような人が対象で、どのように支給されるかチェックしていきましょう。

*この記事では現行の要件をもとに紹介します。2014年3月以前から在学している旧制度にあてはまる人は、文部科学省のHPなどを確認してみましょう。

就学支援金の対象となるのはどんな人?

高校(全日制、定時制、通信制)や中等教育学校(後期課程)、特別支援学校(高等部)、高等専門学校(1~3年生)など、就学支援金の対象となっている学校に在籍する生徒が対象で、新入生だけでなく在校生(2014年以降2020年以前に入学した生徒)も対象です。

専修学校なども含まれますが、高校など既卒の生徒や、次の通り基準を超える収入がある世帯の人は対象外です。

収入の基準はいくら?

就学支援金を受けられるかは、主に両親などの年収(世帯所得)によって決まります。

2020年7月以降は、保護者などの「課税所得(課税標準額)」(両親2人分の合計)を基準として判定されます。具体的な計算式は次の通りです。

【市町村民税の課税標準額×6% − 市町村民税の調整控除の額 = 算出額】

この算出額によって、次の通り支給されます

算出額 < 15万4,500円
→ 支給額: 39万6,000円(最大)=Aパターン

算出額 < (15万4,500円以上)30万4,200円
→ 支給額:11万8,800円=Bパターン

この「市町村民税の課税標準額」がすぐに分かるという人は多くないので(市町村民税の特別徴収税額の決定通知書や課税証明書、マイナポータルなどで確認できます)、世帯年収の目安で確認してみましょう。

子ども(高校生) Aの支給 Bの支給
両親のうち
一方が働いている場合
1人(扶養控除対象者が1人) ~約590万円 ~約910万円
2人(扶養控除対象者が2人) ~約640万円 ~約950万円
両親がともに
働いている場合
1人(扶養控除対象者が1人) ~約660万円 ~約1,030万円
2人(扶養控除対象者が2人) ~約720万円 ~約1,070万円

(出典:文部省HP)

どのように支給されるの?

就学支援金は、生徒本人(保護者)が受け取るものではなく、公立学校であれば都道府県、私立学校であれば学校法人など学校の設置者が、生徒に代わって受け取り授業料に充てられます。

主な支給額は次の通りで、基準となる年収や学校の種類によって支給額が増える場合があります(加算額)。

支給額(月額) 全日制 定時制 通信制
公立高校 9,900円 2,700円 520円
私立高校(全日制) 9,900円+2万3,100円(加算額)

各種控除を忘れないで

肝心の所得要件が、2020年7月以降は「市町村民税の課税標準額」を基準とすることから、旧制度で活用できたふるさと納税や住宅ローン控除など住民税の所得割額を節減する税額控除が影響しなくなりました。これによって就学支援金が受けられなくなった、減額になった家庭も多いかもしれません。

「課税標準額」は所得から所得控除を差し引いた金額なので、所得控除をきちんと活用できているかがポイントです。次にいくつかの控除を挙げますので漏れがないか、あらためて確認しておきましょう。

  • 生命保険料控除
    一般的な生命保険や介護医療保険、個人年金保険に加入している(保険料を支払っている)場合、一定の控除を受けることができます。

  • 地震保険料控除
    一般的な地震保険に加入している(保険料を支払っている)場合、一定の控除を受けることができます。

  • 医療費控除
    支払った医療費のうち、一定額(支払いの合計-支給された保険金)が10万円を超えるとき、その金額をもとに所得控除を受けることができます。

  • 小規模企業共済等掛金控除
    「小規模企業共済」は聞き慣れない人も多いかもしれません。これは、小規模企業の経営者や個人事業主などのための退職金制度ですが、この控除には“等”とある通り、iDeCo(イデコ)などが含まれます。次で詳しく見ていきましょう。