魔法の歌声に対する愛の灯火

登坂広臣“ØMI”の全国アリーナツアーが終幕!記者がオミ君愛たっぷりに現地レポ
(画像=『女子SPA!』より引用)

 ライブ中、筆者は逐一メモを取っていた。会場内の照明が暗くなる演出でも、幸い、そこら中に光るペンライトの青い光が手元を照らしてくれた。今、この瞬間を目に焼き付けつつも、言葉を紡がなければと思い、特に登坂のMCの一言一言は正確に記述しようとした。「Chapter2 SHINE」で影の世界から翻って、光の世界に衣装チェンジされた登坂の純白の衣装が神々しく、彼の言葉も清々しかった。

「最後まで心を込めて駆け抜けたいです。この景色、会場、僕のエンタテインメントを目と心に焼き付けてください」と、客席に心ある言葉のギフトを贈る。続けて、「この曲でひとつになりましょう」と、愛のあるMCを聞いたとき、その言葉に相応しいのは「Starlight」しかないと思った。メロウなイントロに耳を澄ませながら、ノートに書きなぐり続けたものの、やっぱり筆者もペンライトを振らずにはいられなかった。

 左右、上下と客席上をペンライトがウェーブ。その動きをまとめあげ、自在にコントロールするかのような魔法の歌声。頭上を揺らめくブルーの光は、まるで魔法の歌声に対する愛の灯火のようだった。ステージ中央から、客席に向かって美声を発する臣君から客席のひとりひとりが、何を隠そう、正真正銘の愛をキャッチしていたからだ。

 ステージと客席にはまるで気流のような一体感があった。それを象徴したのが、次曲「HEY」であり、初めて客席の映像が映され、HEYの青文字が重なっていた。呼びかけ、呼びかけ返す。こうしたシンプルなやり取りにこそ、深い感動は宿る。コロナ禍のライブでは、マスク越しでさえ、声援を送れない分、この灯火がまた、歌声に乗せられたその愛へのエール(応え)となる。そして、そのエールこそ、登坂が求め続けた「答え」(ANSWER)を導く。

「ANSWER」シリーズの答え合わせ

 アーティスト登坂広臣の素晴らしさは、決してぶれない一貫したテーマ性にある。「ANSWER」シリーズで深められた光と影の表現。彼が探求してきた「ANSWER」とは、いったい何だったのか?

「自分自身が何者なのか、という問いかけを前作『Who Are You?』でやって、その答えとして自分の光と影を見せようと『ANSWER…』を作りました」とライブMCで自ら解説する登坂。

 2021年10月15日リリースのシングル『ANSWER…SHINE』のリード曲「You(Prod.SUGA of BTS)」では、光の世界がポジティブに歌われる。「この場所でわかったんだ」という歌詞には、その時点での「答え」を経過点として読み取ることができる。でも、答えは決して見つからないからこそ、探求され続けるものだ。そんな簡単に答えが見つかってしまったら面白くないし、むしろ見つからない喜びがある。

 人生に答えがないように、表現にも答えや正解はないに等しい。答えを探求する過程で生み出された数々の楽曲。それがそのときどきの答えだと言うこともできるし、「ANSWER」シリーズの答え合わせについては、色々な解釈ができる。見つからない答えを探求するのが「表現活動」だとするなら、答えが見つからないから登坂は、どんどん楽曲をつくる。「新しい表現」が「答え」の代名詞じゃないだろうか?と、筆者はライブ前に考えていたんだけれど。