『かもめ食堂』『めがね』など多くの作品で、女性から圧倒的な支持を受けている小林聡美さんが、港町に暮らす49歳の独身女性を演じる最新主演作『ツユクサ』が全国公開中です。
小林聡美さん
年齢の離れた小さな親友や、気の合う友人に囲まれてささやかな暮らしを続けていた五十嵐芙美は、ある日、車の運転中に隕石に衝突。その日を境に、小さな奇跡が起きていきます。そこには小林さんが「演じる私も慣れていないし、観る方もそうでしょう」と照れながら話す恋模様パートも。本作にまつわるエピソードや、40代後半で一歩を踏み出す主人公にちなみ、45歳で大学に入学した経験を持つ小林さんから、踏み出せずにいる人へアドバイスをもらいました。
恋模様のある物語に多少の照れが
――本作のニュースが出たとき、「この芙美さんを、私が演じるのか(笑)」といったコメントが出てました。
『ツユクサ』より
小林聡美さん(以下、小林)「こういう、恋模様みたいなものをやったことがなかったので。演じる私も慣れていないし、観る方もそうだろうと(笑)。でもそこは恋愛部分ばかりにフォーカスしないで、物語の流れの一部として捉えて、あまり意識しないようにしました。それに脚本を読んだときにまず感じたのは、とにかく可愛いお話しだなというところでしたし」
――可愛いお話し。
小林「いちいち可愛いいんですよ。子どもの語りから始まって、宇宙の話が出てきて、そこから隕石にぶつかったことで周りが色々と動いていって、みんなが幸せになっていくという。もちろん実際に当たったら大惨事だと思いますけど、フィクションとしてね、可愛いお話しだなと思いましたね」
主人公が年齢を気にするセリフがなくなった
――芙美さんのような主人公の物語に、こうした恋愛パートが出てくるのは、悲しいかな日本映画としては新鮮かもしれません。
『ツユクサ』より
小林「今の40代後半の人たちってすごく自由だし、恋愛含め、人生の選択も色々できますよね。結婚しない人、子どもをもたない人、すごくバリエーションがあるなかで、芙美さんのような主人公のことも、あまり深刻にならずにライトに見られる世の中になってきている気がします。
脚本って何回か改訂されるんですけど、最初のころは、自分の年齢を気にしているセリフがあったんです。でもそうしたものが削られていって、どんどん今風のテイストになっていきました。この10年の間に、世の中のいろんなことが変わってきていますし、今の時代らしい軽やかさで描かれている感じはしますね」
――恋のお相手となる吾郎さん役の松重豊さんとは、現場でなにかお話しされましたか?
小林「松重さんは、とにかく美味しいものがお好きな方で。だからお互い最近食べた美味しいものの話ばかりしていました(笑)。お気に入りのアイスキャンディのことを教えてさしあげたら、すぐに試して『あれは本当に美味しかった』と。今はいつも冷蔵庫にあるらしいですよ(笑)」