カルトンという厚紙で箱を組み立て、好みの布や紙でデコレーションを施す「カルトナージュ」は、アジアから運ばれたお茶の入れものとして、貴族のティータイムを飾った古くからフランスで親しまれてきた伝統工芸です。
今回は、新百合ヶ丘で人気のカルトナージュ教室『Perles de sucre(ペルル・ドゥ・スークル)』にお邪魔しました。講師の佐藤裕子さんが手がける作品は、リネン生地にミシン刺繍を施したデザインが中心で、いずれも上品でシックな雰囲気。
SNSで作品を見て、「こんなアイテムで部屋を飾りたい」という憧れから、教室に通う生徒さんが多いことにも頷けます。初心者向けの小箱作りを体験しながら、カルトナージュの魅力について伺いました。
「好き」と「便利」を暮らしの中に表現できる、カルトナージュの魅力
手のひらサイズの小箱から、マガジンラックやダストボックスなど、カルトナージュで作れるものは幅広く、円柱型やカーブを描く箱などその形もさまざま。
「カルトナージュは実用的な大人の工作。“作る楽しみ”と“使う楽しみ”が味わえます。また、“欲しい”と思う収納やインテリアを、好みのサイズとデザインで作れるのもカルトナージュの魅力ですね。贈りものにしても喜ばれると思います」。
玄関に置かれた印鑑ケースやマスクホルダーなど、佐藤さんの作品は実用的なものが多く、“作って使う”という楽しみ方を体現しています。また、佐藤さんが手がけるデザインは装飾も色数も控えめ。リネンに施されたミシン刺繍が上質な印象を与えます。
「私がこのデザインに落ち着いたのは、教室を開く少し前。カルトナージュの作品が増えるにつれて、『柄物のデザインだと部屋が賑やかになりすぎる』と感じるようになったんです」。
もともとシンプルなインテリアが好きだと話す佐藤さんは、「柄」や「装飾」を極力控え、現在のデザインを確立しました。レッスンに使用しているご自宅のリビングには、佐藤さんが手がけた作品がいくつも置かれ、「これも素敵!」「次回はこれを作ってみたい」と創作意欲を刺激されます。
「季節によって布の色や、刺繍のモチーフと色を変えるのもおすすめです。高価なインテリアを買わなくても、気軽に部屋の雰囲気を変えられますよ」。
佐藤さんの作品作りのベースにあるのは「生活に寄り添う」というもの。手間暇かけて作った作品は「飾って眺める」のではなく「使う」ことでいっそう親しみが湧き、次への創作意欲につながると話してくれました。
手早く、でも丁寧に。「こだわりすぎないこと」が楽しむためのポイント
この日体験で作ったのは「シャポースタイルの箱」。イニシャルの刺繍が施された蓋がスタイリッシュな小箱を作成します!
まずは厚み2.5mmのカルトンを組み立てる作業から。ボンドをハケで塗り、一枚ずつ組み立てていきます。
「カルトナージュのポイントは、完璧を求めすぎないこと」と佐藤さん。
ボンドのはみ出しやわずかなズレを気にしすぎてしまうと、調整しているうちにボンドが乾いてきてしまううえに気持ちも疲れてしまうそう。シンプルに見えて、意外と工程の多いカルトナージュ。サクサクとテンポ良く進めるのがコツのようです。
側面をすべて組み立てたら、水貼りテープで内側を補強し、いよいよ布を貼り付けます。生地にシミを作らないよう、ボンドを薄く塗り広げて生地の上に置いたらすぐにヘラで圧着。ここも手早く行うことできれいな仕上がりになるとのこと。
内側にはカルトンよりも薄いケント紙を使用。表側が布で裏が紙素材のクロス紙を使って貼り合わせていきます。
蓋の表面にはふっくらと厚みが出るようキルト綿を入れました。刺繍の位置を決めてピンとシワが出ないよう引っ張りながら貼り合わせます。
蓋の裏側に噛み合わせ用のカルトンを施して…完成!
2時間程かかりましたが、「手早くてお上手です!」とお褒めの言葉をいただきました。慣れてくれば、エンボス加工を施した箱や、カーブのついたアイテムも制作できるようになるとのこと。
「さまざまなデザインで作るのも楽しいですが、インテリアとして統一感を出したいのなら、同じデザインのものを形違いで3個作ると良いですよ」と佐藤さん。
素敵なデザインと、「自分で作った」という唯一無二の小箱への愛着はひとしお。「何を入れよう、どこに置こう」と作ったあともワクワクがおさまりません。
既成品だとしっくりこない、ぴったり納まるサイズの収納がほしいという人に、是非トライしてもらいたいフランス発祥のカルトナージュ。世界でひとつのアイテム作りを楽しんでみてはいかがでしょうか。
■教室情報
『Perles de sucre (ペルル・ドゥ・スークル)』
住所:神奈川県新百合ヶ丘
Instagram:perlesdesucre
※詳細な情報は、お店のHPやSNSなどをご確認ください。
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