出演最新作『女たち』が公開中のサヘル・ローズさん。さまざまな事情を抱える女性たちの生きざまを見つめた本作にちなみ、サヘルさん自身の壮絶な半生を、2回にわたって聞きました。
7歳までイランの孤児院で過ごし、8歳で養母とともに来日し、中学3年のときに「死のうと決めた」と語った前回に続き、「母と本当の親子になれた」と感じた運命の日について、また、子どもたちのために様々な活動を続けるサヘルさんの今後の目標も聞きました。
頭には「死にたい」という思いしかなかった
――中学3年生のときに「死のう」と決心して学校を早退したと。すべてをひとりで抱え込んでしまっていたのでしょうか。
サヘル・ローズさん(以下、サヘル)「はい。親には言えませんでした」
――でもその日、偶然、仕事を早退していたお母さまが家にいて踏みとどまれたと聞きました。お母さまも実は日々苦しんでいたと。
サヘル「そうなんです。ふたつのグラスの水が満杯になって、同時に爆発してぶつかり合えたんです。私も母に言えなかった。いじめられていることも息苦しいことも、しんどくて居場所がないことも。とにかく頭には『死にたい』という思いしかありませんでした。
あのとき、母が家にいなければ、私はいまこの世にいなかったと思います。私は神様をあまり信じていませんが、今思うと、何かに守られたんだろうなと感じます。そのとき母もしんどくて、ひとりで泣いていたのです」
母と本当の家族になれた日
――お母さまも苦しんでいた……。
サヘル「それまでいつも強くて、すごく立派な母で、だからこそ自分も弱さを見せられませんでした。初めて母の弱さと、粉々になった姿を見たことで、自分も粉々なんだと言うことができた。お互いに吐き出すことができた。まさに今回の映画のエンディングと同じです。あの日があったから、私は母と向き合えて、本当の家族になれたのだと思います」