一流の仕事人には、譲れないこだわりがある!

プロフェッショナルのTheory

今をときめく彼・彼女たちの仕事は、 なぜこんなにも私たちの胸を打つんだろう――。この連載では、各界のプロとして活躍する著名人にフォーカス。 多くの人の心を掴み、時代を動かす“一流の仕事”は、どんなこだわりによって生まれているのかに迫ります

EXILEのパフォーマー、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのリーダー兼パフォーマーとして、力強いダンスでファンを魅了してきた小林直己さん。

187cmという見上げるような長身を間近にして驚いていると、「これです」と厚い靴底を上げて見せ、場の空気を和ませてくれた。

体は大きくても不思議と威圧感はなく、低く落ち着いた声には安心感すら覚える。ダンスパフォーマンスを生業としつつ、撮影ではスーツを完璧に着こなす。多面的な魅力の持ち主だ。

小林直己さん EXILE/三代目 J SOUL BROTHERSのパフォーマーとして全国ライブツアーなど精力的にアーティスト活動を行う。パフォーマー以外に役者としても活動し、舞台にも積極的に参加。劇団EXILE公演のほか、2013年2月より行われた『熱海殺人事件40years' NEW』(つかこ うへい作・岡村俊一演出)で大山金太郎役を熱演。各方面より好評を得る。2017年からは俳優として本格的に活動をはじめ、『たたら侍』『HiGH&LOW』シリーズなどに出演。Netflixオリジナル映画『EARTHQUAKE BIRD』にも出演し、日本ならず、アメリカにおいても俳優として活動の場を広げている インスタ:naokikobayashi_works Twitter:@Naoki_works_ 俳優としても活動の幅を広げている。小林さんは今回、Netflix映画『アースクエイクバード』に出演し、主演女優の恋人という重要な役を演じた。総指揮のリドリー・スコットをはじめとするビッグネームの製作チームやキャストが集まる中、全編を通じて披露した流暢な英語や、他のキャストに引けを取らない存在感と繊細な演技が話題を呼んでいる。 本作の出演が決まる何年も前から、小林さんは語学や演技のトレーニングに励んでいた。今回の役は自らオーディションを受けて勝ち取ったものだ。すでにパフォーマーとして大勢のファンを抱える存在でありながら、小林さんはなぜ、現状に甘んじることなく新たな分野への挑戦を続けるのか? その原動力を聞いた。  

「僕にとってのダンスは、禎司にとってのカメラ」

鹿児島で探した、役と自分の接点

舞台は1980年代の日本。『アースクエイクバード』は、小林さん演じる日本人カメラマン・禎司(テイジ)と恋に落ちた外国人女性が、三角関係に心を乱された末、行方不明になった友人の殺害容疑をかけられるというサスペンスミステリー。『アリスのままで』のウォッシュ・ウエストモアランド監督、2016年にアカデミー賞助演女優賞を受賞したアリシア・ヴィキャンデルといった錚々たるメンバーの中で、小林さんは二人の女性を翻弄する役を演じた。

「最初に脚本を読んだときから、禎司という人間にものすごく共感を覚えました。彼としっかり向き合うことで、自分のこれからの人生に必要なものに気付けるんじゃないかと思ったんです」

小林さんは禎司が実際に目にしたであろう景色を見るために、原作小説に描かれた、彼の故郷である鹿児島に渡った。1980年代当時のカメラを入手し、撮影が始まる5カ月前から写真を撮り始め、禎司と同じようにフィルムを現像する作業を繰り返したという。

一体何が、彼にそこまでの準備をさせたのか。小林さんは迷うことなく、「ダンスの経験がそうさせたんだと思います」と応えた。

「僕にとって、芝居はダンスの延長線上にあるんです。ダンスバトルをイメージしてもらうと分かりやすいんですが、相手の次の動きが分からない中で、曲や部屋の装飾、ライティングの具合、オーディエンスの雰囲気、いろんな要素がある中で、全部を受け入れながら即興で踊る。そんな風に彼をつくっていきました。 鹿児島に行き、カメラに触ったのも、禎司という役を踊るためでした」

禎司は鹿児島で何に興味を持ち、どう撮りたいと思ったのか。それを探ることは、小林さんが禎司と自分自身を丁寧に重ね合わせていく作業でもあった。

「禎司はきっと、自分の求める真実を探していて、その過程で感じたことを表現するために写真を撮っているんです。僕も同じような思いでダンスをやってきました。だから僕にとってのダンスは、禎司にとってのカメラ。そう思って、彼の人生を辿りました」

カメラを手に夢中で撮影する禎司と、ステージ上で激しくパフォーマンスする小林さん。普段は物静かな印象を与える一方で、表現の場では情熱的な二人の姿が重なって見えた。

作品の中で禎司は、自らについて多くを語らない。しかし、恋人役を演じたアリシアが「目の奥にストーリーがある」と評したように、小林さんの瞳には語らずして訴える不思議な力がある。禎司のように軽々しく思いを口にしないからこそ、内に秘めた思いは熟成し、重厚な表現力となって観る人を惹きつけるのかもしれない。

「役作りをする上で、監督のウォッシュとは日本の文化や精神性、そして自分自身についてもたくさん話をしました。彼が拾ってくれた僕の言葉が、禎司の人生観を表す重要なセリフになったシーンもあります。役を僕にシェイプさせる自由を与えてくれたことに、とても感謝しています」