軽度認知障害の父親に母親が疲弊。遠方からサポート

老いた親と向き合い疲弊する人々「仕事と介護の両立も大変」
(画像=『女子SPA!』より引用)

都内で働く森田祐樹さん(仮名・52歳)の両親は東北地方に住み、父親は現在85歳。森田さんは仕事の出張で2、3か月に一度のペースで東北に行くことがあったが、父親が運転好きなので移動の際の運転は任せていた。

「ところがある日、ナビで『もうすぐ右折です』と鳴った瞬間に右折しようとしたんです。母親に聞いてみると、最近物覚えや物忘れがひどく、台所の火をかけたまま外出したという話を聞き、認知症を疑って病院に連れていきました」

 診断は認知症ではなく、その一歩手前の軽度認知障害と呼ばれる状態で要介護認定はつかなかった。

「しかし認知機能が落ちているうえに歩くのも遅く、2㎞を散歩するのにも1時間もかかる。また、母親に子どものように甘えてどこにでもついていくんです。それで、母親が疲弊してしまっていて」

 このままだと母親が倒れてしまうと危機感を抱いた森田さんは、出張ではない日も片道3000円の夜行バスに乗って地元に帰り、父親を月3回、理学療法のリハビリに連れていくことにした。

「リハビリのおかげでだいぶ歩くのは速くなりました。今は父親を食事に連れ出したりして、母親を一人にする時間をつくっています」

 森田さんは東京にいる間も母親のフォローを続けている。LINEで愚痴を聞いてあげたり、大学生の娘も協力してくれてLINEで連絡をとっているという。

「母親のフォローは順調ですが、父親が高齢で運転をするのは危険が伴います。しかし、無理に運転免許証の返納の説得をさせるのは逆効果だと感じ、やんわりと『身分証代わりに持っていたら?』と父親に伝えました。

 すると急に『返納することにした』と父親から電話がきて安心したところです。また、介護においては地元にいる親戚とこまめに会っておくことも必要です。何か起こったときの対応や普段の見守りを頼めるので」

親の老いと向き合うのは“介護のプロ”であっても難しい

老いた親と向き合い疲弊する人々「仕事と介護の両立も大変」
(画像=『女子SPA!』より引用)

「仕事なら割り切れますが、身内となるとそうはいかないですよ」

 そう話すのは、介護福祉士として20年働く岩崎敏裕さん(仮名・44歳)。7年前に脳腫瘍の手術で後遺症が残り、要介護4になる母親(80歳)の面倒を見ているが、今でも自責の念に駆られるという。

「病気が判明した後に、母が定期健診を一度も受けていなかったり、貯金もほとんどないことが判明して愕然としました。私は当時、主任になったばかりで職場に迷惑をかけたくないと相談ができなくて。母には介護補助の話をしましたが、『障がい者じゃない!』と拒絶。私が食事の支度やおむつ交換、洗濯などをこなすことに……そんな生活で心身ともにボロボロでした」

老いた親と向き合い疲弊する人々「仕事と介護の両立も大変」
(画像=『女子SPA!』より引用)

結果的に休職することになり、キャリアも諦めざるを得なかった。

「復職した後は数十万円の年収ダウン。部下だった後輩が主任になっていたことが本当にしんどかったです……。それに自分が介護の現場にいるからこそ、母の将来も見えてしまうというか。体が不自由になったら、どれだけ頑張っても回復することはありません。『母が寝たきり状態になったほうが介護はラクだな』とは、しょっちゅう思います。とにかく今は生活するために耐えて働くしかない」

 介護のプロであっても、親と向き合うことは難しい。