今春、話題を集めたドラマ『俺の家の話』では、長瀬智也演じる中年レスラーが父親の介護と向き合う姿が何度も映し出された。ドラマほど劇的ではないにせよ、老いた親と向き合うのは、「あなたの家の話」かもしれない。

 まだ元気な親でも、介護やさらに死後に向けての準備は必要だ。いつかは来る「親の死」にどう備えるべきか。親が元気なうちだからこそ、死後についても話すべきだ。

いつかは来る「死後への備え」をどうする?

親が倒れる前に。いま話しておくべき「お金やお墓のこと」
(画像=『女子SPA!』より引用)

「寝たきりになったり余命宣告をされた後だと話せるムードではなくなります。まだ元気だからこそ建設的な話ができるのです」

 そう話すのは、葬儀会社小金井祭典の是枝嗣人氏だ。20年以上、葬儀に関わってきた経験から死後への備えのアドバイスを送る。

「お金の面を考えれば、仏壇やお墓の手配は両親のお金でやってもらうほうがいいです。そうすれば相続税の対象外になりますから。また、生前に任意後見人を2人選んでおくのも手です。

 一人は子どもで主に身の回りの世話をして、もう一人は信頼のおける弁護士などが財産管理をする。なぜなら認知症になったあと、家庭裁判所が選んだ弁護士が後見人になった場合(※)、家族の意思よりもそちらの意見が優先されるからです。事前に財産分野を任せられる専門家をつけておけば子どもの負担も減らせます」

※後見人=本人(親)に代わって財産管理などを行う人。本人の判断能力がなくなってから後見人を決めるには、家庭裁判所の審理が必要。子供など親族も審理を通れば後見人になれるが、ふさわしい人がいなければ、弁護士などが任命される。

親のお葬式。安心して見送るために必要なこと

親が倒れる前に。いま話しておくべき「お金やお墓のこと」
(画像=『女子SPA!』より引用)

また、お葬式に関しては「両親が地域の互助会に入っているかを確認したほうがいい」と言う。互助会とは、毎月一定の金額を積み立てて、冠婚葬祭時の費用に充てられる仕組みだ。町の中だけの小さな組織ではなく、全国での積立総額は2兆4000億円を超え、経済産業省が指導・監督する巨大ネットワークである。

「僕の体感値ですが、国内のお葬式の4割程度は互助会経由で行われています。ただ、もし親が『入っている』と言っても注意が必要です。互助会の積立金の用途は、棺や祭壇の費用に限定されることが多いので、お花や食事などその他の費用は自己負担で、100万円以上の出費になることもある。

 まずは互助会の見積もりと同時に地域の専門葬儀社との相見積もりをとること。費用だけでなくその葬儀社の対応や担当者の人柄を見るのが葬儀を失敗しない秘訣です」

墓じまいの準備はどうする?

 また、都市部に住む子どもが、地方にある家の墓を維持できないケースが増え、「墓じまい」にも注目が集まっている。是枝氏は「お墓の土地は売れるのか?」と聞かれることがあるという。

「お墓は永代使用権といって所有ではないため、土地転売はできません。むしろ墓石の処分代、外柵の撤去費、法要費用などを合わせると、出費が数百万円になることもあります。単純な土地単価でなく、菩提寺の意向や山の斜面を切り抜いた土地だと重機が通れずに作業代が増えるなど、ケース・バイ・ケースで費用が変わるのです」

 とはいえ、両親の存命中に墓じまいを切り出すのも気が引ける。自分だけでコッソリ費用を調べる方法はないのだろうか。

「そういった場合は、事前に地元の石屋さんに相談するといいです。石屋さんによっては、墓じまいの手順や費用を教えてくれるので」

 親を安心して見送るためにも、事前に準備は進めておくべきだ。