気軽にサクッと食べられ、時間も値段もコスパが良い「富士そば」「小諸そば」「ゆで太郎」などのそばチェーン。外出先の駅前などで食べたことがある人は多いのではないでしょうか。これらの店は、いずれも株式非公開企業で、特徴的な事業運営方法をとっているのが興味深い点です。これらのチェーン店の運営方法を、「株式上場」という視点から考察します。
店の概要を紹介
名代 富士そば(ダイタングループ)
設立 1972年3月
資本金 3,000万円
富士そばは、ダイタングループが運営しているうどん・そばのチェーン店です。主にビジネスパーソンが顧客の中心で、駅の近くに多く店を出店しています。そばだけでなく、うどんや丼ものなども提供しています。
小諸そば(株式会社三ッ和)
設立 1953年11月
資本金 5,000万円
小諸そばは、三ッ和が運営している日本そばチェーン店です。関東地域を中心に集中的に店舗を出店させるという方針がとられているため、狭い地域に店舗が集中しています。
ゆで太郎(信越食品)
設立 1982年5月
資本金 1,000万円
ゆで太郎は、創業会社である「信越食品」とゆで太郎のフランチャイズチェーン運営を行う「ゆで太郎システム」の2社が運営している立ち食いそばチェーンになります。
信越食品では立ち食いの直営店を、ゆで太郎システムでは郊外に座って食べられる店舗を広げています。フランチャイズ展開を進めていることもあって比較的早い出店ペースで規模が拡大しています。挽きたて、打ち立て、ゆでたての「3たて」にこだわっています。
なぜ上場しないのか?未上場企業のメリットとは
3社はそれぞれ運営方針が違うものの「未上場である」という点で共通点があります。これはなぜなのでしょうか。
一般的に株式上場をするメリットには、「会社の知名度が上がりやすい」「運営資金を集めやすい」などが挙げられます。多くの株式会社では、上場することで運営資金を一般の投資家から集め、集めた資金で会社を成長させるべく事業を運営します。
投資した投資家は企業の成長に伴う株価の値上がり益を得ることができます。会社によっては、利益を配当金という形で投資家に還元することもあります。
逆に言えば、利益を得ても社内で使える資金は限られてしまうことになります。また、会社の株を多く保有する大株主は、株主総会などを通じて「経営に参加」してきます。
社内で打ち出した方針が株主からの納得を得ることができないと、方針転換を余儀なくされるケースもあります。また、中長期ではなく、短期目線の成果を追わざるを得ないといったことも起こりうるのです。
未上場企業はどうでしょうか。株式を公開していないので広く投資家から運営資金を集めることはできませんが、自社で事業を運営していくだけの十分な資本があるのであれば、その必要はありません。
会社の運営によって出た利益を多くの株主に配当する必要はないので、社内に還元できます。何よりも、社外の株主による経営への関与が上場企業と比べると少ないのです。
運営資金を外部から調達しなくても、運営をしていけるだけの基盤、資本があるのであれば、わざわざ上場を選択する必要がないというわけです。
こうした考え方は十分に資本を持っているために株式会社にしないという有限会社、上場しない株式会社で行われる運営方法です。この3社はそれだけの基盤を持っているということになります。飲食という毎日お客さんから現金が入ってくるビジネスのため、手元資金が豊富になるのかもしれません。