北海道から沖縄まで毎朝100名を超える参加者が集い、早朝の20分ヨガをして過ごすというオンラインヨガレッスン『朝ヨガのすゝめ』。

主宰するのは茨城・千葉・東京を行き来するヨガ指導者・浅野佑介氏です。

穏やかな語り口と明るい笑顔は、年齢・性別を問わず多くの人からの人気を集める一方で「男性が感情を共有できる場」として、早くからメンズヨガクラスに力を入れてきた経歴も有しています。

今後、IHTAでもセミナーを開講するという浅野氏はどのような人物なのか、ルーツに迫ってみました。

「個性」を活かし「自立」を目指す-生活の延長線上にあるものとしてのヨガ-|浅野佑介インタビュー

『yoganesss』より引用
(画像=『yoganesss』より引用)

感情を吐き出せる場は男女問わず必要

–浅野さんが力を入れていらっしゃるというオンラインレッスン『朝ヨガのすゝめ』はどのような経緯で始まったのですか?

新型コロナウィルス感染症の影響で、リアルの場でのレッスンができなくなり、ある時「これからどうしよう…」と眠れず考えているうちに、朝起きられなくなったのです。不安からか、心とカラダが重みを増していく…そんな印象でした。

そこで、毎日夜に行っていたプラクティスをあえて早朝に設定してみました。すると、沈んだ気持ちがどんどん上向きになってきたのです。

朝、夜明けとともに自己と向き合い、自己を見つめ直すことで「早朝のヨガってこんなにも良いのか」と、多くの方に共有したいと思い、2020年5月末からオンライン配信を始めました。

–2020年5月末といえば、緊急事態宣言が解除されたタイミングですね。

外出自粛が求められた段階で「すぐに始めるべきだ」との意識もありましたし、早い時間にオンライン配信を開始した仲間のSNSを見て焦る自分もいました。

一方で、今までリアルを追求してきた自分にオンラインで伝えられるのか、そして伝わるのか、しばらくモヤモヤしながら考え、やるならば自信があるものを、そして見ていただく方が何かを得られるものをと決心がついたのが5月末でした。

貴重な時間とお金をいただくものですから、自分が心から良いと思えない限りは始められませんでした。

–2018年には『心と身体が生まれ変わる男のヨガ』を出版されるなど、男性のためのヨガクラスにも力を入れていらっしゃいます。これもご自身の経験から生まれた発想でしょうか?

一般的に、男性は「感情表現が少ない」といったイメージがありますが、実はそんなことはなく、表現が豊ではない、そんな感じでしょうか。

私自身も感情の揺れ幅は結構あるほうですが、女性ほど表し切れない。でも、感情が内にこもってばかりでは心身のバランスを壊してしまうことがあります。

以前、メンタルの問題で離職した方が復職準備のために参加する『リワーク・デイケア』のヨガクラスを担当したことがありました。参加者の9割が男性で、心とカラダのバランスがどこか崩れてしまっている。自分の感情と向き合い、どんな自分も認めてあげる場は、男女問わず必要だと実感しました。

–男性のためのヨガクラスではどのようなことをするのですか?

私のクラスでは、参加者同士で会話をしたり交流をしたりする時間を作っています。「ここで聞いたことは外に持ち出さない」というルールで、みんなで輪になって今思っていることや感じていることを吐き出してもらい、みんなで笑ったり怒ったり悲しんだり喜んだり。

従来の女性性・男性性のバランスが大きく変わり、偏りがなくなってきている今の時代、精神的なことを他者と共有できる場所は男女問わず必要です。以前はストレスを溜め込みやすい会社員の男性を対象としてイメージしていましたが、自分が結婚して子どもを持った今、家庭と自分のやりたいこととのバランスで葛藤する男性にも参加してもらいたいと思うようになりました。

「自分は何ができるのか」

『yoganesss』より引用
(画像=『yoganesss』より引用)

–浅野さんにとって、自分の感情と向き合う場でもあるヨガ。始めたきっかけは?

趣味のサーフィンが原因で腰を痛め、友人にヨガを勧められたのです。おかげで腰は回復し、さらにメンタル面にも良い影響がありました。

自身の心とカラダに向き合うヨガの時間で「もしかしたら仕事のストレスも腰痛の原因だったのかもしれない」と気づいたこともあり、ヨガに強く興味を持つようになりました。

–指導者になったのはどのような経緯だったのでしょうか。

ヨガをもっと深めようと、インストラクターの勉強を始めました。知れば知るほど心身の健康に興味が沸き、最前線である医療という現場で理学療法士のアシスタントとして病院に勤務することになりました。

この病院では、ヨガの筋力、体力、バランス能力の向上効果に着目し、院内新設のデイサービス、フィットネスクラブなどでヨガを取り入れることになり、私はそのヨガクラスを提供する責任者として従事することになりました。

ヨガを健康なうちから、より広く、より多くの方に知ってもらいたいと思い独立しましたが、この経験のおかげで心やカラダの痛みや不具合に寄り添うレッスンを心がけ、今まで以上に人に寄り添う姿勢が強くなったと思います。

–独立してすぐに安定はしましたか?

いえ、週に1〜2回のクラスのみで、貯金を切り崩して生活する日々が半年以上続きました。生活のためにフィットネスクラブ等でバイトすることも頭をよぎりましたが、ひたすら「何が自分にとっての価値なのか、自分は何ができるのか」を考えていました。

この時に思いついたことの一つが『男のヨガ』でもあり、さらにオーディションを受けて2015年の『ヨガフェスタ横浜』に出演したことをきっかけに起動に乗り始めました。

–目先の不安に負けずに自分と向き合うことは簡単ではないように思います。

そうですね。でも、「自分が心から好きなことじゃないと頑張れない」ということだけは確信していたのです。

実は大学を出た直後、そんなに深い興味もなかったのにカーディーラーに就職してしまいました。情熱がないからお客さんとのトークも盛り上がらないし、勉強する意欲も沸かない。営業成績も最下位でした。先輩に「向いてないんじゃないか」と言われて目が覚め、自分が何に対して本気になれるかを考えた結果が『スポーツ』だったのです。

水泳やサッカー、ボクシングなどいろいろな運動をしてきたこともあり、スポーツ用品も大好きでした。それでスポーツ用品店に転職したら、今度は接客コンテストで優勝するほどのトップセールスになったのです。このような経験から、大好きなヨガに対しても脇道に逸れずに向き合い続けられたのかもしれません。