コロナ禍に見舞われた2020年頃から、街なかでよく見かけるようになった唐揚げ専門店。外食チェーンがサイドビジネス的な位置づけとして立ち上げたこともあり、“唐揚げ専門店ブーム”のような状況になっています。今回は唐揚げ専門店が増えた背景を探りました。

大手外食チェーンが続々参入 唐揚げ専門店の数は3年で倍増に

日本唐揚協会の調査によると、2018年には1,400店ほどだった唐揚げ専門店は、2021年には3,000店を超えました。3年で倍増したことになります。

唐揚げ専門店増加の背景には、大手外食チェーンの参入があります。「かつや」を運営するアークランドは他の外食チェーンに先駆けて、2014年に唐揚げ専門店「からやま」を立ち上げ、その後はすかいらーくグループの「から好し」やワタミの「唐揚げの天才」など、外食チェーン店の参入が相次いでいます。

実を言うと、唐揚げ専門店のブームは2010年頃に一度到来し、大分県の中津市など九州で展開していたテイクアウトの唐揚げ専門店が、全国に進出しました。今回のブームはコロナ禍で売上に苦しむ外食チェーンが唐揚げ専門店に目を付け、駅前の商店街やショッピングモールなどに出店しているものです。

幅広い層に受け入れられ、出店のハードルも低い

唐揚げ専門店が激増した理由には、消費者側の要因と店舗運営側の要因がそれぞれあります。

消費者側の要因としては以下のようなものが挙げられます。

・から揚げは日常的に食卓によく並ぶメニューで、子どもから大人まで幅広い層に支持されている。しかし、家でつくるのは面倒。店で買っても安い。
・居酒屋などに行けず、家で飲む機会が増え、酒のおつまみとして居酒屋で食べていたような唐揚げが食べたくなった。

一方、店舗運営側にとって、唐揚げ専門店の運営には以下のようなメリットがあります。

・原価が安い。
・持ち帰りの唐揚げ専門店なら揚げるスペースがあればよく、大がかりな設備投資が不要。
・調理手順が比較的単純なのでアルバイトでもすぐに覚えられる。
・幅広い顧客層が期待できる。

つまり、消費者にとって唐揚げは「家でつくるのは面倒だけど、専門店で頻繁に買ってみんなで食べたいメニュー」であり、店舗運営にとって唐揚げ専門店は「コストや設備、調理面などで出店ハードルの低い業態」といえます。