奨学金をうまく活用すれば、金銭的に厳しい家庭で育っても進学をあきらめずに済みます。でも、なかには卒業後に返済が難しくて困窮してしまう人もいます。

奨学金には、お金を「もらえる」タイプとお金を「借りる」タイプがありますが、借りるほうを利用した人は要注意です。Tさんの例を見てみましょう。

知らないまま奨学金を利用したTさんの話 

大学卒業後、念願だった1人暮らしを始めたTさん。新卒で入社した会社の給与は手取り14万円で、家賃は6万円、ほかの生活費も含めると家計に余裕はありませんでした。

しかし、Tさんは1人暮らしを満喫しながらも毎日ひたすら節約に励み、なんとか月1万円を貯金に回すことができていました。

「お金はないけど、なんとかこのまま暮らしていけそう」そう思った矢先、Tさんの口座でおよそ1万5,000円の引き落としがありました。身に覚えのない高額の引き落としにびっくりしたTさんがあわてて確認したところ、奨学金の返済が始まったということが判明しました。

実はTさんは、自分が返す必要のある奨学金を借りていることを知らなかったのです。詳しく確認した結果、Tさんが借りている金額は400万円近くにのぼり、これから毎月1万5,000円の引き落としが発生することに。

今までかなり我慢して節約して貯金もできていたTさんですが、この返済が始まったことで貯金に回す余裕は一切なくなりました。さらなる節約で苦しんでいるなか、社会人2年目になったTさんには住民税の支払いが発生。さらに追い詰められ、憧れの1人暮らしとは程遠い、困窮した暮らしをせざるを得ない状況になってしまいました。

これ以上の節約に限界を感じたものの、もっと高収入の仕事に就くための転職活動をするにも、1人暮らしをやめて実家に戻るにもお金がかかります。今後どうやって生きていけばいいのか、うんざりするほど悩む日々が続くことになりました。

奨学金の返済義務を知らない人は意外と多い

意外かもしれませんが、Tさんのように「将来返す必要がある」ということを知らないまま「借りる」タイプの奨学金を利用している人も一定数います。

日本学生支援機構の調査によれば、奨学金を問題なく返済している人のうち約9割は、奨学金を申し込む前の段階で返済の義務があることを知っていました。しかし残りの約1割は、申込手続きの途中・借りている最中・返済開始時などに気が付いたと回答しています。

さらに、期限どおりに返済できずに滞納した人に限って見てみると、申し込む前に知っていた人は約半数にとどまります。実際にお金を借りたあとに気付く人も多く、Tさんのように返済が始まってから気付く人もいますし、なかには滞納して督促を受けてから知ったという人もいました。

借りたお金は返さなくてはなりません。奨学金には返済不要のものもありますが、自分の利用している奨学金がどんなもので、いつから・いつまで・いくらずつ返済していくことになるのかは、必ず確認しておきたいポイントです。親子できちんと話し合って、意識と知識を共有しておくのが望ましいでしょう。

今年から18歳も成人とみなされ、単独でローン契約が可能になります。奨学金に限らず、知らないままお金を借りるのは身を滅ぼすことにつながり、非常に危険です。注意しましょう。