期間短縮型・返済額軽減型の支払い利息比較

繰り上げ返済する場合に、期間短縮型と返済額軽減型での支払い金利の減少効果を比較する。例として3000万円を35年のフラット35で借り入れ、固定金利1.5パーセント、返済方法は毎月の返済額が一定の元利均等返済とすると、毎月の返済額は91855円になる。返済開始から10年後に100万円を繰り上げ返済することにすると、その時点での元金残高は約2297万円になる。

期間短縮型では、毎月の返済額91855円は変わらず、残り返済期間が25年から23年9カ月に短くなる。減少する利息額は約44万円になる。

返済額軽減型では、残り返済期間は変わらず、毎月の返済額が87844円と約4000円安くなる。減少する利息額は約20万円となる。

このケースでは、期間短縮型は返済額軽減型に比べ2倍以上の利息低減の効果が出ることになった。このようにシミュレーションで期間短縮型と返済額軽減型を比較できる。シミュレーションの方法については後半に紹介するので、自分が組んでいるローンで比較してみるといいだろう。なお、このシミュレーションは手数料等を含んでいないため、実際の繰り上げ返済とは金額が若干異なることをご了承いただきたい。

繰り上げ返済で気をつけたいこと

まとまったお金を繰り上げ返済できる場合でも、繰り上げ返済せずに、そのお金を投資に回すという方法もある。繰り上げ返済で減る支払い金利より、投資でそれを上回る利益を得ることができれば、繰り上げ返済よりも投資をした方が良いことになる。しかし、投資には損失を出すリスクもあるため、繰り上げ返済と投資のどちらを選ぶかの判断は自己責任になる。

繰上げ返済は生活資金ではなく、余剰資金で行うようにする。住宅ローンを早く返済したいなどの理由で無理に繰り上げ返済をしては、その後の家計が苦しくなることもある。急な出費のために、手元にはある程度のお金は持っておきたい。手元にあまりお金を持たず、病気や災害などの出費のために別のローンを組んでいては、必要なかった追加の金利を払うことになる。

現時点での家計と余裕資金だけを考えて住宅ローンの繰り上げ返済を考えるべきではない。住宅ローンは長く続くものであり、金銭面での人生設計であるライフプランを元に繰り上げ返済を検討すべきである。ライフプランを忘れて繰り上げ返済を優先して、将来の子供の学費が足りなくなるなどは避けるべきである。

住宅ローン控除にも気をつけたい

繰り上げ返済を行う際には住宅ローン控除にも気をつけたい。住宅ローン控除とは、住宅ローン減税制度により、毎年の「住宅ローン残高の1パーセント」などが10年間、所得税や住民税から控除される。住宅ローン残高は毎年の年末時点の額になる。

繰り上げ返済すると住宅ローン残高が減るため、住宅ローン控除の額も減ることになる。よって、住宅ローン開始から10年目までに繰り上げ返済する際には、住宅ローン控除の減額分も考慮してシミュレーションする。

住宅ローン控除で実際に控除される額は、「毎年の住宅ローン残高の1パーセント」、「所得税+住民税(一部)」、「限度額40万円」の3つのうち最も小さい額が該当する。住宅ローン控除のシミュレーションは、国土交通省の「すまい給付金」Webサイトなどで提供されている。また、各月の住宅ローン残高は次に紹介する「繰り上げ返済シミュレーション」で確認できる。これらの情報を参考にし、住宅ローン控除の期間中に繰り上げ返済した方が良いかシミュレーション可能である。