知人の編集者さんに連絡をとってみたIさん。すると、ちゃんとお返事をいただくことができました。残念ながらお断りのお返事でしたが、こうして行動してみて、相手からリアクションをもらう経験は、とても大切だと思います。それを積み重ねると、「どうせ返事なんてあるはずがない」というマインドから「当然返事があるはず」というマインドに変わってくるので、実際にお返事をいただけることも増えてくるからです。

お断りの理由としては、評伝というジャンルは売るのが難しいとのこと。でも、これはあくまでも「A社にとっては」という話に過ぎないんですよね。評伝を好んで扱っている出版社や、ぜひ売りたいと考えている出版社だって当然あるでしょうから、そこを見つければいいわけです。要はマッチングなんですね。

というわけで、気を取り直して早速次に。他に挙げていた候補の中から、B社がいいのではと思いました。というのも、Iさんの企画書や試訳を拝読しながら、「この内容は、あの方がお好きなんじゃないかな」とB社にいる知人の編集者さん(Bさんとしますね)のことが思い浮かんだのです。Iさんの選んだ原書は、誰でも気軽に読めるものではなく、読み手を選ぶ本です。読むほうにも求められる水準が高いのですが、読書家には好まれるはず。その点、ベテラン編集者Bさんの興味をかきたててくれるのではと感じました。

IさんにB社を打診してみると、ちょうどB社から出ている類書を読み終えたところで、前向きな姿勢を見せてくれました。類書の主人公はIさんの原書の主人公とは性格的には真逆なものの、逆境をはね返して不可能を可能に変えていった、お手本にしたい人物として共通点があるそうです。

そこで、知人ということもあり、私からBさんに打診してみました。企画書をお送りしていいかお尋ねしたのですが、Bさんは日頃からとてもお忙しい方で、しばらくメールへのご返信がなく……少し待ってからリマインドさせていただきました。すると、よいお返事ができるかどうかわからないけれど、送ってみてくださいとのこと。すぐにIさんからお預かりした企画書と関連資料一式(フィードバックを受けてIさんが修正したものです)をお送りしました。

その後、まだご連絡を待っているところです。そろそろまたリマインドしてみてもいいかなと思うのですが、難しいのはタイミングです。今は年度末なので、年度内に仕上げなければいけない案件を抱えている方も多く、何かと気忙しいものです。そこで催促すると裏目に出てしまうこともあるかもしれません。それよりはむしろ、新年度に切り替わり、「何か新しいことをやろう」という気分のときにリマインドしたほうが、話が動きやすいように思います。人間は理屈よりも気分で動くいきものなので、新年度や連休明けといったタイミングで、何かを始めたくなるものです。そういうサイクルに企画を合わせていったほうが、うまく流れに乗ることができるでしょう。