「僕の部屋で同棲をはじめて3カ月が経った頃には、留守中に勝手に業者を呼んで、冷蔵庫や洗濯機まで捨ててしまっていたんです。人の物を勝手に……」
その頃の彼女には、もう何を言っても無駄だったそう。
「『だって雑誌に書いてあったし』『今はみんなそうしてる。洗濯機がなくても手洗いで十分だし、冷蔵庫が無ければこまめにスーパーに行くから新鮮なものを食べられるじゃん! しかも運動になる』って。どれだけ効率が悪いか、生活に支障をきたすか説明しても、『物に囲まれた生活ってダサいじゃん(笑)』と聞く耳さえ持ってもらえませんでした」
見境なく捨てまくる彼女。彼氏が行った“整理整頓”は?
実際に、冷蔵庫や洗濯機を持たずに生活をしているミニマリストの方も存在しますが、この彼女の場合は「とにかく捨てるだけ」。
「本当に、後先をまったく考えていなんです。最初は手洗いするといっていた服も、面倒くさくなって汚れ物を山積みにするだけ。週末にまとめて僕がコインランドリーに持っていくんです。
食事も冷蔵庫がないから『その分こまめに買い物に行くし』と行っていたのに、近場のコンビニ弁当で済ませるだけ。着替える服も最小限しか持っていないから、基本常に薄汚れた上下スエットです。自分は仕事をしてないくせに、何もない家でゴロゴロするだけで……」
ちなみに家中のゴミ箱も、「ゴミ箱があると簡単に物を捨てちゃうから、余計に無駄がでる!」という理由で撤去されたとか。2~3日おきにコンビニまで捨てにいくといいますが、もちろん持ち込まれるコンビニの迷惑などは一切考えていません。
「自分はブームをはき違えているくせに、僕が新しいバックや靴を買ってくると『無駄な物を増やすな!』と、烈火のごとく怒り狂うんです。もう物がない生活をしたいなら、一人で無人島にでも住んでくれよ……と。彼女の“部屋から無駄をなくす”ルールはどんどん厳しくなっていって、僕が趣味で集めていた海外の雑貨やCDも勝手に売り飛ばされました。毎日のようにケンカになって、『物にこだわるな! 無駄をなくせ!』とバカの一つ覚えのように連呼する彼女。
無駄をなくせ、無駄をなくせ。…………あ。
そして僕は、“彼女”を捨てました」
同棲にはなにかとトラブルがつきものですが、しょせん元々は他人同士。それぞれの価値観やこれまでの暮らしの中で培われてきた「マイ・ルール」があって当然です。それをお互い擦り合わせていって新しいルールが生まれるはず。ただし、そこでこの彼女のように、過度な自分ルールの押し付けは、自分が“整理”される原因にもなるので、なにごとも思い遣りをもってほどほどに……。
<TEXT/赤山ひかる イラスト/やましたともこ>
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