「選抜イケメン大会」の候補になった普通メンの主人公
第一、本作の主人公がイケメンではないのが面白い。妹が加工した証明写真を貼り付けて送った願書でたまたま合格してしまった普通メンの龍馬(細田佳央太)が、明らかな異分子として美南学園に入学することで生じる化学反応がさまざまなドラマを引き起こす仕組みになっている。全国の高校で競われる「選抜イケメン大会」の代表候補20名のひとりに龍馬がなぜか選ばれたことから、ドラマはどんどん展開していくのだ。
普通メンの龍馬が選抜された理由がもう本当にどうしようもなくバカバカしい。イケメン部顧問に就任した元OBで、伝説のイケメン風間(速水もこみち)が目をつけた逸材が何を隠そう龍馬だった。ある日龍馬が校内で犬のうんこを踏むのを見ていた風間が、イケメンはうんこなんて踏まない完ぺきな存在であるはずなのに、龍馬に感じられる「人間臭ささ」が新たなイケメンの要素だと確信。名付けて「うんこ型イケメン」と命名する風間の確信はどうかしているが、妙な説得力もある。
このイケメンの「戦場」ではどうやら見た目のかっこよさだけでなく、人間味などを持ち合わせた内面性が重要らしい。
イケメンの内面性と「性格イケメン」の矛盾
顔面偏差値至上主義の校風からすると、やっぱり一番重要なのは、外見(顔面)であって、内面ではない。イケメンの「メン」は「面」を意味するのだから、そもそも「イケメン」という言葉自体が、外見重視の傾向にある。ところが、「うんこ型イケメン」の龍馬は、俄然内面重視タイプなのだ。
第2話では、龍馬が選抜されたことに反発する同級生・野上(田中偉登)の心温まるエピソードが語られる。病気の少女に選抜メンバーだと嘘をつく野上に対して、彼女は、「顔だけじゃなくて、きっと中身もイケメンなんだろうな」と野上のことを褒める。
そういう人のことをよく「性格イケメン」と呼んだりするが、「性格イケメン」は、外見的にはイケメンでなかったりもする。そもそも外見重視である「イケメン」という言葉にとって、この表現は矛盾しているのだけれど、外見ばかりがもてはやされる風潮に対して、内面性も重視していこうとする意志がこの言葉には込められているように思う。
美南学園がここ最近、大会の強豪校のポジションから遠のいていたのは、まさに内面の欠如が問題だった。そのことに気がついていた風間は、あえて龍馬を選抜メンバーに入れることで化学反応を起こし、他のイケメンたちに精神修業をさせ、人間としての本質を発見させたかった。今ある美しさを刹那的に愛でるのではなく、この先歩む長い人生の道のりを胸を張って歩いていけるような、深い精神力を養うことが大切であることを風間は強調しているのだ。