今活躍している人々に注目する「気になるしごと」。今回ピックアップする仕事は、キャリアアドバイザーです。若者の就労支援や子供のキャリア教育サポートを行う任意団体「Drop in」の一員でもある日本若者転職支援センターの北村敏爵さんに、キャリアアドバイザーになるまでの経緯や、会社員とは別の顔を持つ理由について聞きました。
Profile
日本若者転職支援センター アドバイザー 北村敏爵
大学卒業後、カラオケ店店長、求人広告営業を経験。2017年MAPグループ入社、高卒キャリアに特化したTOP GEAR、既卒・第二新卒向けの日本若者転職支援センターの立ち上げに参画。趣味はバスケと子育て。
就労支援活動を行うために、任意団体を結成
私は現在、人材紹介会社のアドバイザーとして、主に第二新卒やフリーターの方の転職活動及び、中途採用を行なっている企業の採用業務をお手伝いしています。また、働くことに悩みを抱える方の就労をサポートするNPO法人と協力し、就職セミナーや仕事体験ワークショップの運営を通じた支援活動も行っています。
参考:地域若者サポートステーションにて「転職活動実践講習会」を実施 (日本若者転職支援センター)
これまでは企業として、または北村個人として支援活動を行なっていたのですが、この秋から若者や子供に対してのキャリア教育を通じ働くことにまつわる社会問題の解決に取り組む任意団体・Drop in(ドロップ・イン)を立ち上げました。
実は教員免許を持っていることもあり、もともと教育には関心があったんです。キャリアアドバイザーとして若い人の転職支援をする中で、子供のキャリア教育支援強化の必要性を痛切に感じ、少しづつ支援活動を行ってきました。
でも、自分が人材業界で得た知見を活かしながらフラットな立場で子供向けキャリア教育に携わるには、企業としての利益追求とは一旦分けたほうがいいのかなと考えたんです。一企業からの支援には学校側が身構えてしまうこともあるでしょうし、企業の枠を取り払った任意団体でなら、同じ志を持つ社外の人とも協力し合えますから。
活動の構想は2年くらい前から持っていたのですが、なんとなく実現できずにいました。でも、新型コロナウイルスの影響で外出機会が減ったことで考える時間が増え、このタイミングで実行に移す運びとなりました。
今後はDrop inとして、主に高校生向けキャリア教育支援活動などを行う予定です。
キャリアアドバイザーを志したきっかけ
私自身のキャリアは、新卒で入社したカラオケチェーンから始まりました。
特にサービス業を希望していたわけではなくて、大学でバスケに夢中になっていたら就職活動準備が遅れ、内定が出たのがカラオケ店とホームセンターだけで(笑)「早ければ半年で店長になれる」と聞いて、早く成果を出せそうなカラオケ店を選択。最速の入社半年で店長に昇進しました。
当時カラオケ店で一緒だったアルバイトスタッフは、ほんとうによく働くいい子たちばかりでした。でも、それぞれに事情があって厳しいアルバイト生活から抜け出せずにいる。
「こんなに真面目でポテンシャルの高い若者たちが、望んでも就職できない世の中はおかしい。彼らの働きぶりを知っている自分に、何かできることがあるんじゃないか」
そんな風に考えたのが、キャリア教育の重要性を感じた最初のきっかけです。
店長の仕事はやりがいがありましたが、他のスタッフが全員アルバイトだったこともあって、私のシフトは夜勤・連勤が当たり前。時間が不規則な仕事に体力の限界を感じて、28歳で求人広告会社の営業職に転職しました。
畑違いの会社への転職後は、想像以上に大変でした。28歳といういい年になっているのに、ビジネスの基本を何も知らない。例えば「弊社」と「御社」の違いすらわからない。接客で培ってきた対人折衝スキルや、年齢なりの経験はあるのに通用しない。自分よりはるかに年下の新卒組のほうが、よっぽど仕事ができるという現実に打ちのめされました。
現在はキャリアアドバイザーとして学歴や経歴に自信がない、定職についたことがない、アルバイト経験しかない人たちの転職を支援していますが、みなさんが抱えている不安や焦りは、すごくよくわかるんです。自分も同じように、仕事に焦っていた若者でしたから。
キャリアアドバイザーとしての使命感は、間違いだった?
キャリアアドバイザーになったのは、求人広告会社を経て2度目の転職で今の会社に入ってから。入社してすぐ、高卒キャリアの方の転職支援を担当することになりました。
転職相談に来られる方は、働いたことがないとか、アルバイト経験しかない方も多かったので、どこかカラオケ店時代のスタッフらと重ね合わせて見ていたところがあって。
安定した仕事に就きたい、変わりたいのに変われない、変わるチャンスが掴めない…そんな人たちのサポートをしたい。ある種の使命感のようなものを持って日々対応していたのですが、その考えは間違いなのかな、と徐々に感じ始めたんです。
20代のキャリア形成は、目の前のことだけじゃなく、中長期的な視点を持つことが必要。そう考えていた私は、若い求職者の方に対して
「5年後、10年後はどうなっていたいですか?」
という質問をよくしていました。でも
「あ、そういうの、別にいらないんで(笑)」
みたいに、かわされてしまうことが多くて。キャリアプランとか、将来的なビジョン云々なんて今求めてないから、とりあえず仕事紹介してもらえます?みたいな、ドライな感じ。
あれ?自分の使命感ってズレてたのかな。暑苦しい押し付けだったのかな…? 張り切っていた自分が、ちょっと恥ずかしくなりました。
よく考えると、自分だって20代の頃は将来のことなんて深く考えてなかったんですよ。30代、40代にはどうなっていたいかなんて、想像すらできなかった。
若い世代特有の考え方を汲み取れていなかったと気づいてからは、もっと手前の「なぜ長期的な視点でキャリアを考える必要があるのか」という点からお話しするようになりました。
何が起こるのかわからないのが人生だけど、キャリアや生き方について早い段階から考え始めることは、決して無駄にはなりません。40代、50代になってから「20代のときにもっと考えて行動しておけばよかった」と悔やんでいる大人は、多いですからね。