「離婚するなら死んでやる!」と言っていた夫は…

 一方、夫の洋平(宮崎吐夢)は忍に突きつけられた離婚届にあっさりサインをする。彼がやけにご機嫌なのは、スナックで働く涼子(和田光沙)が最近、彼に興味をもってくれていると思い込んでいるから。

 涼子は、店のママで千秋の母である冬子(酒井若菜)を追い出し、大ママを味方につけてちゃっかりママにおさまった人物だ。ここにも激しい嫉妬があったのだろう。

 洋平は「誰かにかまってほしい」男なのだ。妻の忍が、もう自分の手の届かないところに行ってしまったとわかったとたん、近づいてきた涼子で簡単に手を打つ。こんなことでは、いつか涼子に騙されて捨てられるのがオチかもしれない。

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ひとりで立てずに、千秋の両手にぶら下がる女性たち

 人は自分と同じ土俵にいる人に嫉妬するものなのだろうか。手が届かなければあきらめるが、同じ土俵から出ていこうとする人間には、「ここにとどまって」と執着する。その典型が千秋と同様の過去をもち、千秋に救われたみひろだろう。

 自分の傷を癒やすために、千秋の傷を忘れさせたくないのだ。同じ場所にいたいから。だからSNSで忍の悪口を書きまくったり、忍に「千秋の妻」だと名乗ったりする。とられたくないのだ、この世で唯一の味方を。ひとりで立って歩く勇気が出ないからなのか、その勇気をもつことにまだ踏み出すことができないのか。

 それは千秋の母・冬子も同じだ。涼子に追い出されても文句ひとつ言い返せない冬子は、相変わらず酔っ払って男をひっかけようとしているが、それもうまくいかず、千秋に「助けて」と電話をかけてくる。

 精神的にはもはや冬子より大人になり、すでに同じ土俵にはいない千秋だが、それでも母を見捨てることができないのは彼の優しさだろう。冬子はそれをわかっているのだ。そして自分はきちんと息子を庇護(ひご)できなかったのに、成長した息子に庇護を求める。彼女はみひろの行き着く先なのかもしれない。千秋は母とみひろ、ふたりの女に両手にぶら下がられているようなものだ。

 冬子もまた、息子が精神的に遠いところに行ってしまうのが怖いのだろう。そのせつなさ、やるせなさはじんじん響いてくるが、冬子さんもひとりでがんばってみようよと声をかけたくなってくる。

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 強くなった忍と、大人になった千秋は誰にも嫉妬はしない。千秋は岡野に嫉妬されたことがむしろエネルギーとなったようで、続編を一気に描き上げる。

「過去のことだよ」千秋と自分自身に言い聞かせる忍、「まだ終わっていない」と忍を抱きしめる千秋。再会したふたりの関係に、どんな進展があるのだろうか。

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<文/亀山早苗> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 亀山早苗 フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio

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