山口紗弥加が主演する、新たな年の差ラブストーリー『シジュウカラ』(テレビ東京系)。坂井恵理の原作漫画とともに話題のドラマを、夫婦関係・不倫について著書多数の亀山早苗さんが読み解きます(以下、亀山さんの寄稿)。

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いやらしくじわじわと、にじみ出る男の嫉妬

 さまざまな嫉妬が渦巻いた今回のドラマ『シジュウカラ』第9話。嫉妬の強さや方向性はそれぞれ違うが、嫉妬がエネルギーになる場合もあれば人から生きる力を奪うこともあるのではないだろうか。

 いちばん大きな嫉妬は、忍(山口紗弥加)とつきあうことになった高校時代の同級生で、今は担当編集者でもある岡野(池内博之)だ。彼は忍の気持ちがすでに夫にないことはわかっているので、離婚間際の夫への嫉妬はない。

 彼の中でひっかかっているのは、自分が担当している千秋(板垣李光人)のこと。忍のかつてのアシスタントであることは知っているが、忍の作品、千秋の作品を読んで、ふたりに何かがあったのではないかと疑惑を抱いている。

 さらに千秋に、自分の過去を描いた『となりのおばさんに買われていました』の続編を描くように勧めるのだが、なかなか描こうとしないのを見て「このままだと佐々木先生と差が開く一方ですよ」と千秋の心をえぐる。

 千秋は「いつかちゃんとした漫画家になって忍さんと一緒になる」のが夢だったのだ。そのことを岡野はもちろん知らないが、千秋が忍に特別な感情をもっているのは察しているのかもしれない。だから忍の名前を出す。

18歳下の千秋を“恐れている”岡野

 このあたり、岡野の嫉妬がいやらしくじわじわとにじみ出る。自分も本来は漫画家になりたかった、だがなりきれず、さりとて別の道へも行けず編集者となった。編集者であれば、作家に愛をもって接するのは当然なのに、岡野は特殊な環境にいた千秋の心を見つめようとも受け止めようともせず、意識的か無意識かはわからないが挑発するような言葉を投げかける。

 岡野から、千秋に続編を描くことを勧めていると聞いた忍が、「傷をえぐりながら描くんだよ、そう簡単に描けるもんじゃないって」と思わず言うと、「やっぱり漫画家同士、気持ちがよくわかるんだね」と漏らす。この言葉は、人としてのふたりが惹かれ合っているのは認めたくない、漫画家同士だからわかるのだと自分に言い聞かせているようにも聞こえる。

 忍にとって18歳年下の千秋は、岡野にとっても18歳年下。だが岡野は年下の千秋を恐れている。漫画家として、男として。

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