後輩のミスで、かえって気がまぎれた
「ですがある日、Yくんがけっこうなミスをしてしまって。あまりにYくんの仕事の飲み込みがいいので、確認が甘くなってしまった私が悪いのですが」
先方に謝りに行ったり、一から作業をやり直すことになり、おおわらわだったそう。
「かなりバタバタしてしまって大変だったのですが…おかげで離婚騒動や、これから独りで生きていく不安感などを思い出さずに済んで正直助かったんですよね」
なので会う度にYくんに謝り倒されていた千夏さんは、少し悪い気がしていました。
「Yくんにお礼をしたくなったので『無事にひと仕事終えられたから、お疲れ様ってことで好きなものおごるよ、何がいい?』ってたずねたんです。もちろん離婚騒動を忘れられたお礼なんて言いませんよ」
Yくんは「じゃあ千夏さんのおすすめのお店に連れて行ってください」と嬉しそうに答えてくれましたが「え、高いものでも何でもいいんだよ?食べたいもの教えてよ」とさらに聞いてみました。
「すると、ちょっと考えたYくんが『一番食べたいものは、大学生の時に亡くなったおばあちゃんのカボチャの煮物なんですけどね』と笑っているのを見て、優しい子なんだな~って心がほっこりしました」
カボチャを料理中に痛みが
結局、今度千夏さんが行きつけの天ぷら屋さんに連れて行ってあげる事になりましたが…。
「偶然、カボチャの煮物は私の得意料理なのでちょっと久しぶりに作ってみようかなと思ったんです。それで、上手にできたらYくんに持っていってあげようかと」
そして帰宅後すぐに、段ボールから包丁とまな板を取り出してカボチャを切ろうとしましたが、ものすごく硬くて包丁が半分位までしか入りません。
「両手で包丁を持ち、腕を身体に密着させて全体重を乗せて思い切り力を入れたらスパーンと切れたのですが、その反動でか右胸の下辺りに痛みが走って」
ですがしばらく休んだら痛みは薄らいできたので料理を続けました。
「触ったり押したりしなければ痛くなかったので、そのままカボチャの煮物を仕上げました。わたし的にとても美味しくできたので、これまた気分転換になりYくんに感謝だなと思いました」
そして翌日、カボチャの煮物をYくんにお裾(すそ)分けしたそう。
「Yくんが『嬉しい!良かったら帰りに温かい飲み物でも買って、近くの公園で一緒に食べまませんか』と誘ってくれたので、支度をしていたら…昨日の胸の下辺りとその周りも痛くなってきてしまって」