妻をバカにすることで、自分を保ってきた夫

「それじゃダメだってわかってたのに」

 その言葉を、洋平は「忍の反省」と受け止める。忍ちゃんも反省したことだし、水に流してやるよ、夜食でも作ろうか。彼に代表される「何もわかってない50代後半の男(たち)」に今度は忍の言葉が炸裂する。

「洋平さんはさ、いっつも私をバカにしてきたよね。私をバカにすることで自分を保ってきたんだよね」

 多くの女性たちが喝采(かっさい)を挙げただろうと予想できるこの言葉。人を貶めることで自分が優位に立つことができるという、日本の夫婦の伝統芸。  忍は例を挙げていく。だが夫は「言ってないよ、そんなこと」と気づこうともしない。  極めつけは「オレたち、夫婦だろ。言いたいこと言って何が悪いんだよ」

 同じ言葉が今も、どこかの家庭で繰り広げられていそうだ。

20年経ってやっと言えた「離婚してください」

 夫は自分が倒れてからの5年間、ずっと怒っていると妻を責める。忍はその言葉を聞いて心を決めた。 「5年じゃないよ、20年だよ」  嫌味や皮肉をやり過ごし、ひとりで苦しんでいた15年がある。漫画家としてやっていけるようになったとたん、夫は倒れた。そして5年なのだ。何もわかってないと忍は思う。だがそれは想定内だったのだろう。 「でも20年、おまえ、幸せだっただろ」  それ、本気で言ってる? そう言ったあと、忍から涙は消えた。

「離婚してください」

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