今の物価上昇は、賃金は上がらず不健全
ここで、思い出してほしいことがあります。
それは、年率2%のインフレ(物の価格が上がること)。これは、アベノミクスを始めた頃の日本政府の政策目標であったことです。
9年前、アベノミクスで年率2%の物価上昇を目指すとし、異次元の金融緩和をしたもののついに実現することがなかったことが、ここにきて実現しているのです。
ですが、歓迎すべきこととは思えません。なぜなら、今の物価上昇は当初目的した物価上昇とは異なるものだからです。言ってみれば、不健全な物価上昇だと思うのです。
健全な物価上昇とは、国内の景気が良くなり、賃金も上がり、消費者の購買力が上がることで物やサービスが健全に売れ、それに伴い物価も上がるもの。今回の物価上昇局面では賃金は上がっていません。それどころか、コロナで目の前の生活ができなくなっている人が多いのです。
それも、物価が上がった理由は国内の景気とほとんど関係ないもの。その原因は海外にあるからです。
言ってみれば、賃金は上がらず景気の悪い日本経済に、物価高だけが輸入された形です。
海外の原因とはなんでしょうか?
原油、穀物の価格上昇
まずは原油価格の上昇。2021年後半から各国がウィズコロナの経済政策に舵を切ったことから経済が少しづつ回るようになり、それに伴いエネルギー需要が増えたのです。
しかし、産油国は一時的なものだとして原油の産出量を増やしていません。さらにウクライナ情勢が緊迫し、西ヨーロッパへの天然ガスなどのエネルギーの一大供給国であるロシアとの対立も、さらにエネルギー価格の上昇要因になっています。
食料品は毎月のように小麦や大豆など穀物の価格上昇が続いていて、その影響を受けています。これらは、温暖化に伴う異常気象が第一義的な理由です。さらに加えてコロナ禍で減ったコンテナ船やトラック輸送などの物流の混乱が続いていて、輸送したくてもできない、予定通りにできないという状態が続いています。
需給が崩れた上に、エネルギー価格も上がったので、輸送費も大幅に値上げしているのです。
さらに決定的なのが穀物も原油も今やマネーゲームの投機の対象となってること。