大小様々な箱を並べたような不思議な形の岩が広がる「寝覚めの床」は、木曽路の景勝地。面白いのは、海から戻った浦島太郎が玉手箱を開けた場所という伝説が遺されていること。でも、ここにあるのは木曽川…なぜ浦島太郎は海から川へ?!
木曽路にある景勝地「寝覚めの床」
色濃い山間、木曽川に沿って集落や道があり、マイナスイオンが漂う長野県木曽郡上松町に【寝覚めの床(ねざめのとこ)】があります。ここは「木曽路」の真っ只中。
「木曽路」とは、江戸時代の五街道のひとつ「中山道(なかせんどう)」の別名です。お江戸の日本橋から京都に通ずる重要な道でした。「中山道」は、木曽川に沿って険しい峠を越え、深い谷を抜け、山の底を縫うようにして伸びるので「木曽路」と呼ばれるようになったのですね。
だから【寝覚めの床】の周辺には、「妻籠宿」や「馬籠宿」など、今でも遺る宿場がたくさんあります。
何故岩がこのような形に?
木曽川 と一言で言っても、上流と下流とでは雰囲気が全く異なります。下流は、幅広で土手も広く穏やかな流れかもしれませんが、上流は、川が侵食してきたであろう岩がゴロゴロ。
そんな上流で、最も綺麗な景勝地が【寝覚めの床】です。この辺りの岩は、 花崗岩(かこうがん) というとても硬い岩で、日本では古くから石材「御影石(みかげいし)」として建築などに使われてきています。その 花崗岩 を、長年かけて 木曽川 が削ってきました。花崗岩は割れ方が特徴的。カクカクとした、大きな箱を並べたような不思議な形に浸食されていきます。
それが近年になり、木曽ダム が設けられてから川の水位が下がったために、水底で侵食され続けていた花崗岩が水面上にあらわれたんだそう。岩とそれを囲む森林、そしてエメラルドグリーンの川の色も相まって、この素晴らしい光景が国の名勝としても指定されました。
浦島太郎は「寝覚めの床」で玉手箱を開けた?!
ここで面白いのは、浦島太郎 の伝説が遺っていること。なんでも、浦島太郎はここで玉手箱を開けておじいさんになったとか。
ちょっと待って!浦島太郎は亀に乗って海辺に戻ってきて、そこで玉手箱を開けちゃったんじゃないの?!ここは海から遠い、木曽川だよ?!なんで?!と思いませんか?ここに遺る伝説によると、浦島太郎の話は海で終わらないのです。要するに、竜宮城から帰ってきてすぐに玉手箱は開けていなかったのです。
竜宮城から帰ってきたものの、自分を知る人は誰もいない。自分の家もない。なので、浦島太郎は日本の各地へ漫遊の旅に出たそう。そこで気に入ったのが、この地。大きな岩の上で、毎日木曽川で釣りを楽しむ日々を送っていました。
そんな浦島太郎は、地元の人と思い出話をしているうちに、ふと玉手箱を開けてみたくなってしまいました。そして、ここで開けてしまい、ぼわわんっ!700歳も歳を取っちゃった!「竜宮城に行ってから、この玉手箱で実年齢になるまでの事が、まるで夢。ここで夢から覚めてしまった。」という伝説により 【寝覚めの床】という名がついたんだそう。
寝覚めの床を上から眺められる「ねざめ亭」
このような伝説も遺る 【寝覚めの床】を気軽に見られる場所があります。それが【ねざめ亭】。もともとドライブイン(今でいう「道の駅」)がありましたが、2017年にリニューアルオープンして、とっても綺麗になりました。
お土産売り場とレストランがつながっているテラスがあり、目の前の木曽川からのマイナスイオンをガンガン感じられます。
このテラスから、【寝覚めの床】を見下ろすことができます。岩の上をよ〜〜〜く見ると、アリンコのように見える人の姿が。
そうなんです、【寝覚めの床】へは歩いていけるんです!せっかくここまできたら、ちょっと運動がてら、川辺まで行ってみませんか?