幸せになるというロールモデルを作っていきたい
――そもそも、当事者云々の議論をするまでになってないんですね。
『フタリノセカイ』より
飯塚監督「セクシャルマイノリティでも安全に職場で働けるようにと、取り組みをされている一般の企業よりも、映画の現場は遅れている印象です。日本にもセクシャルマイノリティの俳優はたくさんいるけれど、まず彼らが安心安全に働ける環境ができなければ、当事者を出すべきみたいな話も語りずらい。全然そこまで行っていないと思います」
―― 一方で監督の作品やこれまでのインタビューからは、未来を信じる力強さや希望を感じます。
飯塚監督「悲劇の面を切り取ってストーリーにするのは、ある意味簡単です。事実、いまは同性婚もできないし、満たされた環境ではない。けれど、普通に前を向いて生きているセクシャルマイノリティの姿も描かれるべきだし、あえて使いますが、僕も普通に生きています。
暗い側面を描く作品もあっていいと思います。でもそこばかりプッシュすると、若者が『僕らは不幸になるんだ』と感じてしまう。だから僕は、これからを生きる若者たちのためにも、幸せになるというロールモデルを作っていきたい、作るべきだと思っているんです。僕は希望の側面を担当したい」