トランスジェンダーの青年・真也(坂東龍汰)とその恋人・ユイ(片山友希)が、ほかの誰でもない、自分たちの幸せの形を求めた10年間を映し出す映画『フタリノセカイ』が公開中です。監督は、トランスジェンダーである自身の経験をベースにしたデビュー作『僕らの未来』(2011)で、国内外から評価を得た飯塚花笑(いいづか・かしょう)さん。
『フタリノセカイ』より
主人公ふたりの強い愛と、未来への希望を感じさせる本作も話題を集めている飯塚監督にインタビュー。現在もなお差別的な言葉が飛び交うことの多い映画業界の現実を語る一方で、「これからを生きる若者たちのためにも、幸せになるというロールモデルを作りたい」「映画が友達になれれば」と力強いメッセージを語りました。
世間から感じた幸せへの同調圧力
――飯塚監督の1作目『僕らの未来』は、自伝的な要素が強い作品でした。トランスジェンダーとシスジェンダー(「心の性」と、生まれたときの「体の性」が一致している人)のカップルを描いた今回は、リサーチを重ねたのでしょうか。
飯塚花笑監督
飯塚花笑監督「始まりは一個人として感じたことでした。20代半ばに差し掛かった頃、周りの人間が結婚したり出産したりといったことが出てきて、ふと感じたんです。世間一般的に、子供を持つことや家庭を持つこと、結婚することがイコール個人の幸せだみたいな同調圧力があるなと。
一般的なシスジェンダーのカップルと同じようには子どもを授かれない条件のなかで、では僕自身、幸せになることができるのだろうか、僕らにとっての幸せって何なんだろうと。すごく考えまして、映画の中にロールモデルを観たいと思ったんです。
そこから、トランスジェンダーの男性とパートナーさんの話とか、本編のユイに近い立場として、不妊治療をしている人、したことのある人などに取材を重ねていきました」