生田神社といえば、神戸の繁華街のすぐ近くにある、とても歴史深い神社。創建は201年で、源平合戦で激しい戦いがあった「生田の森」があることでも有名です。そんな長い歴史が楽しめるたくさんの見どころ、その場所など、境内散策に役立つ情報をご紹介します。

【生田神社】は見どころいっぱい!でもちょっと分かりづらい…

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(画像=まき子、トリップノートより引用)

神戸イチの繁華街、三宮に近く、アクセスも良いことから観光名所にもなっている【生田神社】。神戸旅行での行き先リストに入れている方も多いと思います。

でも、「とりあえず名所だから、参拝だけしよう」で済まそうと思っていませんか? それだけではもったいない!もう少し踏み込んで境内を隅々まで廻ると、より生田神社の素晴らしさを堪能できると思います。とはいっても、生田神社の ホームページ に見どころは書いてあるものの、どこに何があるか分かりづらい…。また、見つけたとしても注釈の看板が古く読みづらい…。

そこで、皆さまの境内散策がより効率良く楽しめるよう、見どころのわかりやすい解説や、詳しい場所をご紹介したいと思います。

ですが!その前に、事前に知っておくとより境内散策が楽しくなる、生田神社にまつわる歴史をご紹介したいいと思います。 知っておいて間違いなし!というポイントを、下記の4つにまとめました。

1. 始まりの201年から現在の地名につながる!

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(画像=まき子、トリップノートより引用)

上の写真「御由緒」は、楼門をくぐる手前の左側にあります。生田神社の主祭神は「稚日女尊(わかひるめのみこと)」、日本神話に登場する神で、「稚日女」とは、若く瑞々しい日の女神 という意味があります。

この稚日女尊が、201年、神戸港で神占いをした 神功皇后 の前に現れ、「私は活田長峡国(いくたながさこく)に居たい。そこに祀らせよ。」と神託した、と『日本書紀』にはあります。これが「生田神社」の始まり。

この神託にある「活田長峡国」には、神戸に今でも残る地名が含まれています。まず「活田(いくた)」、これがまさに 生田神社 の「いくた」。そして「長峡(ながさ)」も、今のJR三宮駅からJR神戸駅の北側にある町名「北長狭通(きたながさどおり)」につながります。ちなみに、「峡」が「狭」になったのは町名をつけた人が単純に間違えただけだとか?!

2.「生田の神封四十四戸」から生まれた街「神戸(こうべ)」

古代(奈良時代あたり)では、神社の周りは 社領(神社の領土) となり、そこに住む人々は神社に税を納めたり、神社に務めるなど奉仕していました。その家のことを「神封(じんぷ)」と言います。すなわち「生田の神封四十四戸」とは、生田神社の神封が44軒、という意味。その44軒があったエリアが、現在の 神戸市中央区の一帯。

そして、その住民のことを当時は「神戸(かんべ)」と呼んでいました。だから、この一帯に住む人たちの「かんべ」が後世になって「こうべ」と言われるようになったのですね。

3.生田神社では「松」はタブー!

日本の神社はじめ歴史深い場所には、何かと縁起の良い 松 を見かけます。しかし、生田神社には一本も見られません。なぜなのでしょうか?

実は、生田神社は今の場所に建立されたのではなく、201年当初は新神戸駅の奥にあった 砂山(いさごやま)にありました。ここには、現在の日本三大神滝の一つ「布引の滝」があり、現在も流れている 生田川 があります。

この生田川は当時は暴れ川で、とうとう 799年(延暦18年)4月9日に大洪水 を起こします。「このままでは山全体が崩壊してしまう!」と危惧した村人が、御神体を今の場所に移転 させたんだそう。その大洪水の時、神社の周りには松が植えられていましたが、洪水を防ぐ役割を全く果たさなかったどころか、水に流された松が社を破壊する始末。その故事から、今でも生田神社では松はタブーとなっています。

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(画像=blog.goo.ne.jp、トリップノートより引用)

また、能舞台の鏡板の絵といえば「松」ですが、生田神社では「杉」の絵が描かれ、元旦には「門松」ではなく「杉飾り」(上写真)を立てています。

4.源平合戦で形勢が逆転した「一ノ谷の戦い」の場が「生田の森」

さて、生田神社が現在地に落ち着いてから数100年後は、源氏 vs 平氏、いわゆる「源平合戦」の時代です。一時は平氏が優勢でしたが、その形勢逆転を決定づけた戦いが「生田の森」で繰り広げられました。

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(画像=まき子、トリップノートより引用)

「生田の森」は、世界大戦の大空襲でほとんどが焼けてしまい、今となっては“鎮守の森”として生田神社の境内に残っていますが、当時はもっと広大なエリアに森が広がっていて、一帯は「一ノ谷」と呼ばれていました。一ノ谷は、北は断崖絶壁の山がそびえ立ち、南は海、という 天然の要塞。平氏はここで陣を張っていたんです。

裏手を取った「義経と弁慶」の「逆落とし」

平氏は「まさか断崖絶壁の山から攻撃されるまい」と、たかをくくっていましたが、その裏手を取ったのが 源義経と弁慶 が率いる70騎。この断崖絶壁の山の上に辿り着くと、義経は馬と共に「皆の者!駆け下りよ!」とこの崖を先陣となって駆け下ります。他の源氏軍も続いて駆け下り、一ノ谷にいた平氏の陣営に突入!背後から襲われると思っていなかった平氏軍は大パニック。

今でも「逆落とし」という言葉がありますが、まさにこの「義経たちが断崖絶壁を駆け降りる」という情景が由来です。

逆転の鍵を握った「梶原」

一言で「一ノ谷の戦い」と言っても一箇所で激戦が起きたわけではなく、周囲にある複数の陣営で激戦がありました。“義経たちの逆落とし” で源氏軍は士気を高めたものの、平氏軍の兵力は強く簡単には破れない。源氏軍のリーダーたちも次々と討たれてしまいます。

そこで、踏ん張ったのが、源氏軍の「梶原 景時(父)と景季(息子)」です。仲間が討たれていく中、一度はひるんだけれど、ふりそそぐ矢の中を突進して「梶原の二度駆け」と逸話が残る奮戦を見せました。こうして、生田の森で繰り広げられた一ノ谷の戦い で、平氏はあちこちでボロが出始め、ついには敗走。源氏が政権を握る鎌倉幕府へと時代が移ることになります。

序章が長くなりましたが、これだけ押さえておけば、もうバッチリです!

生田神社は本殿をぐるっと回れば見所いっぱい

それでは、生田神社の周り方をご紹介します。楼門をくぐる前にもいろいろポイントはありますが、やっぱり訪れたらまずは本殿で参拝したいですよね。諸々の見どころはこの後ご紹介します。

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(画像=まき子、トリップノートより引用)

まずは立派な 楼門。この両サイドに、おみくじやお守りなどの売店と、祈祷の受付があります。

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(画像=まき子、トリップノートより引用)

そして 本殿 。ここに、冒頭に述べた主祭神「稚日女尊(わかひるめのみこと)」が祀られています。

生田神社の面白いところは、稚日女尊が祀られている本殿以外にも、いろんな神が祀られている祠がたくさんあること。基本的には、 本殿 の周りをぐるっと回れば全て網羅できますが、その場所を分かりやすく説明するため、下記の5エリアに分けてご紹介します。

  • 1.本殿の右側
  • 2.本殿の左側
  • 3.本殿の裏側
  • 4.生田の森
  • 5.駐車場〜楼門

1.本殿の右側

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(画像=まき子、トリップノートより引用)

本殿から右側の道へ行くと最初にあるのが、3つの御祭神が祀られている祠です。一番右にあるのが、病気封じや道守の神を祀る「塞神社」。真ん中が、元々ここにあった神社の神を祀る「雷大臣神社」、この神は料理上手のようです。そして、一番左にあるのが、歌人の柿本人麻呂を祀る「人丸神社」、学問の神様としても崇められています。

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(画像=まき子、トリップノートより引用)

さらに奥に進むと、パワースポットらしい雰囲気になります。ここにも見どころがいっぱい。

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(画像=まき子、トリップノートより引用)

まずは右手に注目。ここにあるのは「包丁塚」。料理人の魂がこもる包丁を祀るために、皇太子殿下御成婚・第61回神宮式年遷宮の記念事業として、神戸市内の料理食品関係者によって建立されました。全国でも珍しい塚です。

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(画像=まき子、トリップノートより引用)

その先にある大木は「楠の神木」です。樹齢500年の年輪を持つこの楠は、第二次世界大戦の 神戸大空襲 で焼けただれてしまいましたが、それでも力強く蘇ったそうです。それにちなんで、再生・再起・復活・復興 の象徴として信仰されています。

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(画像=まき子、トリップノートより引用)

「楠の神木」の右奥にあるのが 納札所 です。普段はここにありますが、初詣の時期は、本殿の左側に大きな納札所ができます。

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(画像=まき子、トリップノートより引用)

通路の突き当たりにあるのは「稲荷神社」。京都の伏見稲荷大社と同じように鳥居が連なっています。祀られているのは「倉稲魂命(うかのみたまのみこと)」、別名、伏見稲荷大社の主祭神「宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)」です。

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(画像=まき子、トリップノートより引用)

「稲荷神社」の入口のすぐ手前、左にあるのは、稲荷神社のための 手水舎 です。