アダルト大国といわれながら、性教育に関しては世界で大きな後れを取るニッポン。性教育バッシングへの批判や偏見が正しい教育を妨げる。予期せぬ妊娠や性被害から子供を守るため、今こそ性教育への認識を改めなければならない。
国際的な基準にほど遠い「性交」NGな性教育
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熊本市の慈恵病院で昨年12月、10代の女性が身元を明かさずに子供を産む内密出産をし、国内初の出来事に社会に衝撃が走った。
妊娠を誰にも言えず事件化してしまうケースなど、こうした10代での望まない妊娠は後を絶たない。その責任は妊娠した女性でも、させた男性でもなく、時代遅れの性教育にあると、どれだけの人が気づいているのだろうか。
ユネスコが各国の研究結果を踏まえて発表した’09年「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」によると、性教育を学ぶことが初交年齢を遅くし、慎重になることがわかったという。また、「無知と誤った情報が生命を脅かす」と性を学ぶことの重要性を説いている。
日本でも性教育の重要性を表す調査結果が出ている。10代の妊娠中絶率が全国平均の1.5倍だった秋田県では性教育に力を入れ、医師講師を派遣する性教育講座を’00年に高校生へ、’04年に中学生へ開始すると、10代の人工妊娠中絶率が減少し、全国平均を下回るまでに改善した。
15~20歳未満女子1000人対、秋田県保健体育課作成
それにもかかわらず、日本全体の性教育は、知識を教えることで性の乱れを招くという「寝た子を起こすな」という考え方がいまだ根強い。
学校や先生によって学ぶ機会に大きな差がある現実
「寝てないんです。とっくに起きてます」と、性教育講演を21年実施する開業助産師の櫻井裕子氏は一蹴する。
櫻井裕子氏
「学習範囲を示す文部科学省の学習指導要領に『妊娠の経過は取り扱わない』という『はどめ規定』があります。忠実に守ると義務教育で性交については教えてはならず、避妊や中絶も扱えません。ただ、学習指導要領はあくまで学習すべき最低基準なので、子供たちの実態に合わせて発展的に教えることはできるのですが、それも学校の判断が左右します。はどめ規定に収まる内容を希望し、慎重な姿勢の学校が多いと感じます」
学校が慎重になるのは、’03年に起こった都立七生養護学校などの性教育バッシングが背景にある。当時、一部の学校で行われていた授業内容が「過激」であると保守系の国会議員を中心に批判の声が広がったが、具体性の欠ける内容では、インターネットの過激な情報で知識を埋めようとするリスクが高い。