ドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系、月曜よる9時~)の注目度がすごい。田村由美によるミステリー漫画をドラマ化した本作では、主人公・久能整(菅田将暉)の“長ゼリフ”に毎回共感の声が続出している。
作中、理路整然と話す久能はしばしば他の登場人物をイラつかせており、確かに現実にこのような話し方をする人がいると「もういい!」と怒鳴りたくなる。にもかかわらず、なぜ久能の話が耳に入ってきやすく、人の心に響きやすくのだろうか。その要因を探っていく。
ポイント1:海外の事例を出す
久能は度々海外の事例を提示するが、このことが説得力だけでなく聞きやすさを高める要因になっているのではないか。第1話では、刑事・池本優人(尾上松也)から、オムツを替えたりゴミ出ししたりなど家事育児に参加しているのに妻の機嫌が毎日悪くて困っていると相談を受ける。
これに久能はメジャーリーグの中継を見ている際、出産や入学式といった家族のイベントを理由に選手や監督が試合を欠場していることがよくある、という話をする。その理由として、「彼らは立ち会いたいんですよ。『行かずにはいられるか』って感じで」と説明。
続けて、「その試合の中継を見ている日本の解説者は『奥さんが怖いんでしょうね』なんて言う。彼らには、メジャーリーガーが行きたくて行ってることが理解できない。なぜなら自分はそう思ったことが無いから」と口にする。家族のイベントに父親が立ち会うことをメジャーリーガーは「権利」、日本人は「義務」と捉えていると価値観のギャップを示す。
そして、「子どもを産んだら女性は変わる」と不満を垂れていた池本に「ちょっと目を話したら死んでしまう生き物を育てるんです。問題なのはあなたも(妻と)一緒に変わっていないことです」と締めた。
ここぞという時に、聞き耳を立ててもらいやすい
また第2話では、バスジャックされた際に乗り合わせていた青年・淡路一平(森永悠希)相手に久能節が炸裂。淡路が学生時代にいじめ被害に遭うものの、逃げることができなかった自分自身を悔いている時、「僕は常々思っているんですが、どうしていじめられている方が逃げなきゃならないんでしょう」と口にする。
欧米の一部では「いじめ加害者=病んでいる」と判断しており、“いじめ加害者こそカウンセリングを受けさせて癒すべき”という価値観があるらしい。いじめ加害者に目を向けず、いじめ被害者に「逃げて良いよ」というメッセージを送るという、日本に定着している常識に疑問を呈した。
「海外ではこうだ! 日本は遅れている!」というセリフは一見疎ましく思うが、それでもやはり「海外では~」と言われると聞き耳を立ててしまう。何でもかんでも海外を引き合いに出すと“意識高い系”のレッテルを張られかねないが、ここぞという時は使ってみたくなる。