最近、美容業界やエステ好きの間で、「脳洗浄」という小顔エステがじわじわと流行しています。
脳洗浄とは、サロン「PARAFUSE.」が生み出した小顔メソッド「PARAFUSE.脳洗浄」のこと。お笑い芸人・NON STYLEの井上裕介が自身のYouTubeチャンネルで体験し「小顔になった」などと報告したり、ものまねタレントの丸山礼が女性誌で紹介するなど、著名人も話題にしています。PARAFUSE.で講義を受けて、「脳洗浄」を始めるサロンも全国各地に広がっているのです。
摩訶不思議な「脳洗浄」とは
でも、そもそも脳って洗浄できるものか? サロン「PARAFUSE.」(パラフューズ)のホームページを確認すると、以下のような紹介文が書かれています。
「私たちの小顔エステは別名、『PARAFUSE.脳洗浄』といいます。PARAFUSE.の小顔エステは脳脊髄液へのアプローチからスタートし、PNFのテクニックを混ぜ、最後に包帯を使い形状記憶をイメージさせるユニークで新しい小顔メソッドです」
ホームページ内では、脳脊髄液の流れが悪いと、「脳が圧迫されて浮腫んだ状態になると、脳の働きが低下し、自立神経(※)が乱れます。その結果、すべての病気、症状の原因となり得ます」と説明。(※「自律神経」の誤字)
さらに、脳脊髄液には「脳の、神経へ栄養を送り、老廃物を除去する」役割があり、「老廃物が排泄されずに滞ってしまうと、頭痛・めまい・肩こり・腰痛・冷え・生理痛・うつ・関節痛・倦怠感・自律神経失調などあらゆる症状が可能性がある」「脳脊髄液をきちんと流し、脳を活性化する事で結果的に小顔になります」といった持論を展開しています。
でも、「脳洗浄」「脳脊髄液を流す」…などと聞くと、なんだか怖そう…とも感じてしまいます。施術そのものは大変気持ちが良く痛みは全くないそうですが、それはヘッドマッサージと何が違うのか?という疑問の声もあがっています。
外からのマッサージで「脳脊髄液を流す」ことが本当に可能なのか、また脳脊髄液を流すことで小顔になるのか? 美容外科医であり、美容皮膚科医でもある上原恵理先生に、医学的な見解を聞きました。
脳脊髄液を流すには大きな手術が必要
――まず、脳脊髄液とはどういう役割を担っているものなんでしょうか?
「脳と脊髄に栄養を与えてるのが脳脊髄液です。人間の体は、血液が体全体を栄養している(※)のですが、脳は非常に大切な臓器なので、直接栄養することはできないシステムになっているんです。血液脳関門という関所のようなところがあって、そこは脳が必要な栄養成分だけを通し、脳に有害な成分をブロックするような構造になっています。その血液脳関門を超えたものが脳脊髄液と呼ばれる、脳や脊髄を栄養している液体となります」(上原先生、以下同)
※編集部注:「栄養する」とは、栄養素が血流を通って体をまわり、エネルギーや他の目的に使われることを指します。