山口紗弥加と板垣李光人の“年の差ラブストーリー”『シジュウカラ』(テレビ東京系)。坂井恵理の原作漫画とともに話題のドラマを、夫婦関係・不倫について著書多数の亀山早苗さんが読み解きます(以下、亀山さんの寄稿)。
【前回記事】⇒「結婚生活が苦しい」妻は、我慢か離婚か、不倫か。女性たちの生き様にしびれる|ドラマ『シジュウカラ』
誰のおかげで仕事できてるかわかってる?
ドラマ「シジュウカラ」第4回を見て、あーあ、洋平(宮崎吐夢)さん、やっちまったなあと苦笑した。妻・忍(山口紗弥加)とアシスタントの千秋(板垣李光人)が雨の中、自宅前で話しているのを見てモヤモヤが止まらなくなり、つい妻を責めてしまうのだ。
そして逆にかつての浮気を「私知ってたよ」と指摘されると、 「男の浮気と女の浮気は違うんだよ!」 とブチ切れ。
さらにその後、自室の仕事机の上にベッドを設置、寝室を別にする意図を明確にした妻に対して不快感を募らせる。 「誰のおかげで漫画続けられているかわかってる?」 「私だって漫画で稼いでる」 「それで生活できるのか、家族を養っていけるのか、オレの給料ありきだろうが。そこらへん、ちゃんと自覚しろよ。気まぐれでいいよな、家で気が向いたとき絵描いてさ」 「家のこと、悠太のこと、何もしてこなかったじゃない。全部私に丸投げで!」 「それオレがやっちゃったら、おまえはオレのために何をしてくれるわけ?」 なかなかすさまじい攻防戦である。
精神的に妻に依存し、経済力で牛耳ろうとする夫の悲しさ
これをモラハラ夫と言ってしまうのはたやすいし、実際それは事実だ。だが、ここに透けて見えるのは精神的に妻に依存し、経済という力で妻を組伏すしかない男の悲しさだ。男たちはそうやって今まで生き延びてきたのである。どこかで妻にはかなわないと思いつつ、だけど稼いでいるからオレのほうが上と単純に信じていれば、家庭は安泰な時代がかつてはあった。そういう親を見て育ってきたのだ、アラフィフは。
もし妻に経済力があれば、夫たちは「いつ捨てられるかわからない」から、精神的に熟成しなければならない。そうされたら困るから「誰のおかげで漫画を描いてこられたわけ?」と上から抑圧するような言い方をするのだ。そうとしか言えないのだ。
夫は稼ぎ、妻は家事育児に専念する。高度成長期にはそんな分業制度が必要だった。だが今は違う。仕事があろうがなかろうが夫婦の立場は対等である。人間同士なのだから当然なのだが、夫にはそもそも「妻を下に見ている自覚」がないのだから、なかなか対等にはなりづらい。