「ある朝、イチモツが家出した」なる、なんとも気になるキャッチコピーが目に飛び込む映画『ポプラン』が公開中。『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督(37)が構想に10年を費やしたという念願の映画化作品です。
上田慎一郎監督
一見、奇抜な本作のアイデアの成り立ちや、かなり人さまざまだという、監督の耳に入ってきた観客の受け取り方、さらに実は自分探しの物語でもある本作にちなみ、『カメ止め』以降に監督が「自分を見失った」ときのことを聞きました。
10年前にふと浮かんですぐ脚本を書いた
――10年来の構想が結実した作品だと聞きました。そもそものアイデアはどこから?
『ポプラン』より
上田慎一郎監督(以下、上田監督)「これは、ふととしか言えないんですけど、10年前、まだ僕がフリーターをしながら自主映画をせっせと作っていたころに、1週間に1本オリジナル企画を考えようと自分に課してたんです。その時に思いついたんです。最初は『朝起きたら自分のアレがなくなっていてそれを探す』という、ただの奇抜なワンアイデアでした」
――そこから自分探しの物語にというのは、割と初期から出てきていたのでしょうか。
上田監督「その時にすぐに脚本を書いたんです。そしたら自然と、主人公が地元に戻って疎遠だった人たちと再会していくという物語になりまして。いろいろ変わりはしましたが、その辺は最初から同じでしたね」
感想に、その人のジェンダー観や価値観が見える
――よく「自分の息子」などと言ってるのを聞きますし、それが無くなるというのは、機能的な話だけではなく、おそらく男性にとって大問題なんだろうなと。アイデンティティそのものとも言えそうな。
上田監督「はっきりとしたメッセージみたいなものを明言せずに、解釈の余地があるようにしているので、みなさん色んな捉え方をしてくださっています。男らしさみたいなものを取り戻す話だと感じる人もいれば、男らしさみたいなものから解放される話だという人もいるし、その人のジェンダー観や価値観によって、受け取り方が変わるかもしれません」
――これまでに聞いた感想で印象に残っているものはありますか?
上田監督「究極のおバカ映画として、頭を空っぽにして観て笑ったという人もいれば、すごい社会批評の目線を感じる映画だったとか、俺にとってはホラーだったとか、本当に人それぞれなんです。面白いです」