ろくに経験がないのに、危険な手術にこだわる医師

 2021年12月の末に、私はアベマ・プライムに招かれて、日本の中絶問題について話しました。その時、討論相手としてゲスト出演した産婦人科医は、吸引だけでは「取り残し」があるので「ソウハ」は不可欠なのだと強弁しました。  ところが、よくよく話を聞いてみると、不妊治療を専門とするその医師は自分では中絶を行っていないといいます。彼の「ソウハが不可欠」という話は、何十年も前の研修医時代のエピソードだったのです。

産科 また、仮に今でも日本の医師たちが「吸引だけでは終わらせられない」のであれば、半世紀前から吸引だけで中絶手術を行っている海外の医師たちの方法を学んでこなかったのでしょう?   2回もやればマスターできると言われる吸引ではなく、10回も生身の女性の身体で訓練しなければ「指定医師」になれないような難しい「ソウハ」を使いつづけてきたのでしょう? 

 この医師の証言は、日本の中絶医療の改善が停滞していることを自ら暴露するものだったのです。

「初期中絶は21万、中期は5万」という病院の闇

 さらに、アベマに出る直前に若い友人の一人が「日本産婦人科医会の重鎮の病院」の中絶料金について教えてくれました。  妊娠12週までの初期中絶は21万円なのに、12~15週の中期中絶は5万円に設定されているというのです。よく見てみると、妊娠12週以降の中絶に適用される約40万円の「出産一時金」を病院が丸ごと受け取った上で、さらに中絶料金5万円と埋葬料9万円も計上していることが分かりました。

 つまり妊娠11週6日までは21万円、12週0日以降は5万円と一日違いで患者の負担が劇的に下がるのです。この価格設定は「より遅い中絶」に誘導していることにならないでしょうか?